残暑お見舞い申し上げます。
コロナウィルスの流行がおさまらず、なかなか気軽に旅行に行けないなぁという方もいらっしゃると思います。絵本を読みながら、世界を旅した気分になってみるのはいかがでしょうか。
『世界中からたっくさん!』(マーク・マーティン 作/偕成社編集部 訳)
“世界をひとめぐり”という言葉にぴったりなのが、オーストラリア発のこちらの絵本。
さまざまな都市や地域の特徴を、イラストで教えてくれます。といっても、まったくお勉強っぽさはありません。作者マーク・マーティンさんのユーモアに、にっこりほっこり。「ああ、こんなにたくさんの人や生き物が、みんなどこかでくらしてるんだなぁ。」と、わくわくしてくる絵本です。食べたことのないものもたくさん出てきます。もっと旅に出たくなってしまうかも!

エジプトの食べもの。どんな味なのか知りたい!
「世界のともだち」シリーズ

「世界のともだち」シリーズ第1期のセット。
各国のくらしを、よりくわしく知りたい方におすすめのシリーズ。気鋭の写真家たちが世界36か国を訪れ、10歳前後の子どもたちの日常を撮った写真絵本です。キャッチフレーズは「将来、友だちになるかもしれないだれかの毎日」。それぞれのくらし、学校、お祭りなど、ちがっていたり、共通点があったり。
私がおもしろいと思ったことのひとつは、学校がある日のお昼ごはん。家に帰って食べる、親が持ってきてくれていっしょに食べる、休み時間に好きなものを食べるなどなど……国や学校によって、ほんとうにさまざまです。ぜひ、本を見てたしかめてみてください。
シリーズ36巻のラインナップはこちら。

『アメリカ 西海岸の太陽とコリン』より。移民国家に暮らし、さまざまなルーツをもつ子どもたちは、学校にもってくるお弁当も多種多様。
ここからは、海外から訳された絵本をご紹介していきますね。
北アメリカ
『よかったね ネッドくん』(レミー・シャーリップ 作/やぎたよしこ 訳)
ネッドくんはびっくりパーティーに招待されて、ニューヨークからフロリダへむかいます。
飛行機に乗れて「よかった!」と喜んでいたら、「たいへん!」まさかの墜落。でも「よかった!」下には干し草の山。と思ったら「たいへん!」……幸運と不運に見舞われるネッドくん。でも、めげずにどんどん進んでいきます。ジェットコースターのようなこのお話、最後に待っているのはなんでしょう?
『月夜のみみずく』(ジェイン・ヨーレン 詩/ジョン・ショーエンヘール 絵/くどうなおこ 訳)
夜、女の子と父親が雪のつもった森にでかけていきます。月の光が照らすなか、はたして、みみずくはあらわれるのか––––どきどきする気持ちが伝わってきて、まるで自分も北米の大自然にいるかのよう。アメリカですぐれた作品にあたえられるコルデコット賞を受賞した、詩情あふれる絵本です。
さて、こんどは南へむかいましょう。
カリブ海・南アメリカ
『わたしがテピンギー』(中脇初枝 再話/あずみ虫 絵)
カリブ海の島国ハイチのむかしばなしを、中脇初枝さんが再話された絵本です。
知恵をつかって団結し、悪者から身を守った女の子の、痛快なお話。絵を担当されたあずみ虫さんは、アルミ板をつかって、あざやかな絵をかかれています。女の子たちの表情がとても生き生きしていてかわいいので、ぜひごらんください!
『いっぽんのせんとマヌエル』(マリア・ホセ・フェラーダ 文/パトリシオ・メナ 絵/星野由美 訳)
ヨーロッパ
『うんちしたのはだれよ!』(ヴェルナー・ホルツヴァルト 文/ヴォルフ・エールブルッフ 絵/関口裕昭 訳)
ドイツの人気絵本です。
目のわるいもぐらくんが、頭の上に失礼な落とし物をした犯人をさがしにでかけます。
「ねえ きみ、ぼくのあたまに うんちおとさなかった?」まわりの動物たちにたずねると、「ぼくだったら こうするさ」と見せてくれます。が、犯人はみつからず。こまったもぐらくん、こんどはハエにきいてみます。そして、わかったのは? もぐらくんはどうする?
オチも最高ですが、動物のうんちにもくわしくなれる、すぐれもの。
絵をかいたウォルフ・エールブルッフさんは、小さなノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞の画家賞を受賞されています。
『サメってさいこう!』(オーウェン・デイビー 作/越智典子 訳/佐藤圭一 監修)
イギリスからは、ノンフィクション絵本をご紹介しましょう。
欧米では、サメは「こわい」というより「かっこいい」と人気があるんだとか。英国のイラストレーター、オーウェン・デイビーさんによるこの絵本は、デザインもかっこいい!
サメは、恐竜が生まれる2億年も前からいるんだそうです。骨はすべて軟骨だって知っていましたか?
同じ作者の『サルってさいこう!』もぜひ!
『マルコとパパ––––ダウン症のあるむすこと ぼくのスケッチブック』(グスティ 作・絵/宇野和美 訳)
スペインで出版されたこの本は、次男マルコが生まれてから6歳までのことを絵日記のようにつづった、父親の愛情あふれるイラストエッセイです。作者グスティさんは、アルゼンチン出身のイラストレーター。最初は息子のダウン症を受け入れるのが難しかったことや、家族4人の日常を、リアルに描いています。マルコのかわいさと、グスティさんの「あそぶのをわすれるなよ、と日々ぼくはおもう。」という言葉にぐっときました。
つぎは、少し北のほうへむかいます。
『十二の月たち』(ボジェナ・ニェムツォヴァー 再話/出久根 育 文・絵)
東ヨーロッパからロシアなどに広く住むスラブの人々の民話を再話した本書は、チェコにお住まいの画家、出久根育さんの絵本です。雄大なチェコの自然、とくに雪景色を想像しながら読んでみると、夏でも涼しく感じられるかもしれません。
出久根さんは、ロシアの民話『マーシャと白い鳥』も再話し、絵をかいています。深くあざやかな色が印象的です。
『おばけやしきへようこそ!』(キッキ・ストリード 作/エヴァ・エリクソン 絵/オスターグレン晴子 訳)
スウェーデンからは、こちらの一冊をご紹介します。
両親とはぐれて森の奥に迷いこんだ女の子。泊めてもらおうと、お城のような建物の扉をノックします。そこは……実はおばけやしきだったのです! 魔女、怪物、ライオン……魔物たちはみんな女の子をこわがらせようとしますが、女の子はぜーんぜん平気。
落ちつきはらった女の子と魔物たちのやりとりがおかしくて、すかっとするお話です。夏の夜にもハロウィーンにも、ぴったり。
では、私たちの住むアジアに目をむけてみましょう。
アジア
『たまごからうま』(酒井公子 再話/織茂恭子 絵)
インドとバングラデシュに広がるベンガル地方の民話です。市場で「馬の卵」を買った男、逃げていった動物を馬だと信じこみ、必死に追いかけていくのですが……。勢いのあるユーモラスなお話で、日本の昔話「ふるやのもり」にも少し似ています。親しみがわきますね。
『西遊記』(唐亜明 文/于大武 絵)
絵本で西遊記を読みたい方には、全3巻の決定版をおすすめします。
有名なエピソードを再話したのは、長年、日本で子どもの本の編集者として活躍されてきた唐亜明(とうあめい)さん。
絵は、中国の画家、于大武(うたいぶ)さんです。
孫悟空が、迫力ある大判の画面上で、小気味よくあばれまわりますよ!
『あずきがゆばあさんととら』(ペク・ヒナ 絵/パク・ユンギュ 文/かみやにじ 訳)
(編集部・和田)