見返しというのは、表紙のうらに貼ってある紙のこと。表紙と本文をつなぎあわせる役割があり、本の構造上なくてはならないものです。と同時に、表紙をひらくと最初に目にとびこんでくるページなので、デザイン的にも大事な部分。「さあ、どんな話が始まるかな……」とワクワクさせてくれる、プロローグ的存在なのです。
そして児童書には、ここにちょっとした遊びやしかけが施されているものがたくさんあります。今回は偕成社の本の中から、そんなおもしろ見返し傑作選をお届けします!
ロングセラーから殿堂入り3点
子どものころ、はじめて「見返し」という存在を意識したのはこの本だったかもしれません。『ノンタンのたんじょうび』。
イラストで描かれたレシピって、どうしてこんなに愛着がわくのでしょう! この豪華付録感、しかも前見返しから後ろ見返しまで内容がつづくという充実ぶりに、ときめきが止まりませんでした。
次は、世界的に有名な『はらぺこあおむし』より。おっと、この本の場合は先にタイトルページ(扉)から見ていきましょう。
このカラフルな水玉柄は、グッズにもよく使われているので、見覚えがあるのではないでしょうか? それではここで、あらためて見返しに戻ります。
ほら! さっきの水玉たちをくりぬいた紙が使われています。なんておしゃれなアイデア! 絵本作家になる前はグラフィック・デザイナーだったカールさん。さすがです。検索してみると、カールさんご自身がブログでこんなふうに書かれていました。
「見返しは、劇場の幕のようなものです。劇が始まるまえに現れ、劇が終わってから、また現れる。私は、見返しのデザインには並々ならぬこだわりをもっています。」「はらぺこあおむしの絵本作りは、まずパンチで穴をあけるところから始まりました。そのことを思い出すから、この絵本の見返しはとくに気に入っています。」(ERIC CARLE’S BLOG JULY 24, 2009 より。筆者訳)
カール作品の見返しは、どれも大胆かつ洗練されていて必見です。ぜひチェックしてみてください。
さて、見返しが楽しいのは絵本だけではありません。読み物にも傑作が多々あります。その白眉が、こちら!
いきなりタイトルや著者名が出てくる斬新さ。でも、問題はそこじゃない。ページをめくると、まさかの、「見返しが終わらない」。
もはや見返しと言っていいのかどうかも分かりませんが、紙の本という媒体でとことん遊んでやるぞという、このユーモアと気概、しびれます。
いろんな見返しアイデア
……と興がのってきたものの、こんなふうに1冊ずつ挙げていったらキリがないことがわかってきたので、ここからはスピーディに紹介していきますね。
※なお、見返しが凝っている本は前と後ろの見返しで趣向を変えていることが多くあります。キャプションで特に「前見返し」「後ろ見返し」と記してあるのは、もう一方の見返しはまた違いますよという意味なので、気になったらぜひチェックしてみてください!
レシピと同様、手描きにするといっそうときめくものといえば、地図や新聞でしょう。
断面図や見取図、作り方系もいいですね。
裏設定の情報や、まんが。読みごたえたっぷり!
登場人物紹介があると、本編を読みながら「この人だれだっけ?」と参照できます。「本の中からこの人をさがせ!」という絵さがしクイズになっているものもあって、楽しいです。
最後に。残念ながら品切れなのですが、「いつか長編で、こういう遊びをしたいなあ」とひそかに目標にしているイチオシ本を一つ。
お話にでてくる人形たちのカタログになっているのですが、一部やぶれて欠けていますね。本来ここにいるはずの人形は、本編の物語でも行方不明なのです。そして、カバーをとると、この紙片が、
表紙にあるんです……!!! この本は、見返し以外のところでも絵で見せるしかけがいっぱい盛りこまれているので、機会があったら手にとってみてくださいね。
まだまだ紹介したい見返しはたくさんあるのですが、そろそろ終わりにしないと他の仕事が進まなそうです。
みなさんも、お家や図書館にある本の中から、とっておきの見返しをさがしてみてくださいね。それでは!
(編集部 矢作)