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編集部だより

「誰一人取り残さない」社会にするためにできること『SDGsチャレンジ100』監修のSDGsジャパンにインタビュー

2015年に、国連のすべての加盟国が採択したSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)。今では、子ども達の間にもSDGsの理解や実践は広がっています。この9月に刊行となった『SDGsチャレンジ100』の本を監修していただいた一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(略称:SDGsジャパン)事務局長の新田英理子さんに、どのようなことをする団体なのか、主な活動、SDGsとは何か、そしてその先について、お話をうかがいました。

SDGsジャパンの、事務局長の新田英理子さん(右)、スタッフの久保田将樹さん(左)。オフィスにて。

SDGs市民社会ネットワーク(略称:SDGsジャパン)ってどのような組織?

編集部:

まず、SDGs市民社会ネットワークについてお聞きします。団体名に「SDGs」「市民社会」「ネットワーク」という3つの言葉が入っていますが、具体的にはどのような組織なのでしょうか。

新田:

SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)は、SDGs達成を目指して活動するCSO(市民社会組織)が集まったネットワークです。行政とは別に、SDGsに関連するさまざまなテーマに沿って活動する団体が集まり、達成のためにテーマを組み合わせたりしながら、市民社会の立場で活動しています。

編集部:

「市民社会」とは、何を指していますか?

新田:

それぞれが意思をもつ生活者ひとりひとりの集合体を、市民社会と呼んでいます。市民社会の団体を結びつけるSDGsジャパンもまた、広い市民社会の一部なのです。

編集部:

SDGsジャパンは、日本政府が2016年に設置した「SDGs推進円卓会議」に、3名の方を推薦されましたね。

新田:

そうです。分野やジェンダー、活動地域のバランスを考えて推薦しました。円卓会議に参加しているメンバーには、SDGsジャパンに参加している140ほどのCSOから出された意見を政府に届けてもらっています。

国会議員や政府との意見交換会のようす。手前3名がSDGsジャパンのメンバー。

SDGsジャパンは何をしているの?

編集部:

SDGsジャパンの、主な活動を教えてください。

新田:

活動には3つの大きな柱があります。

1つ目は、日本政府や政党、国際会議などへのSDGsに関する政策提言活動です。SDGsジャパンは、SDGsを達成するときに「誰一人取り残さない」ことが重要なポイントだと考えています。声を出しにくい人々や、そういった人々を支援している市民社会組織の声を集めて政府にはたらきかけています。

2つ目は、国内外のNGO、企業、行政などとの連携、そして3つ目はSDGsの普及・啓発です。

SDGs推進円卓会議構成員から岸田首相に提言書を提出。左端がSDGsジャパン共同代表理事の三輪敦子さん、右から2番目がSDGsジャパンのユースユニットのメンバー。

2017年、国連事務総長のアントニオ・グテーレスさん(前列右から3番目)の来日時に開催された、日本の市民社会組織の対話会合の様子。会議はSDGsジャパンが主催。後列右から2番目には新田英理子さんも。

編集部:

ウェブサイトなどを拝見すると、SDGsジャパンはSDGs17目標のすべてに対してとても幅広い分野で目標を掲げられていますが、どのような形で活動していますか?

新田:

SDGsジャパンでは、専門分野ごとに会員団体が参加する「事業ユニット」制度を設けており、現在以下の12のユニットが活動しています。

(1)開発ユニット
(2)環境ユニット
(3)教育ユニット
(4)国際保健ユニット
(5)社会的責任ユニット
(6)ジェンダーユニット
(7)障害ユニット
(8)地域ユニット   
(9)ビジネスと人権ユニット
(10)貧困ユニット<準備中>
(11)防災・減災ユニット
(12)ユースユニット

複数のユニットにまたがって活動している団体もあります。たとえば子どもを取り巻く課題について活動する団体が、途上国の開発という意味で(1)開発ユニットに、保健・健康に関しては(4)国際保健ユニットに、人権や児童労働の問題では(9)ビジネスと人権ユニットにも関わるという具合です。

編集部:

小さな団体の声も、たくさん取りまとめて、行政や国際会議などの場で提言をしているということですね。

新田:

そうできるように日々がんばっています。

SDGsジャパン主催オンラインイベント「日本におけるSDGsの達成状況を評価~市民社会の視点からの評価レポート公開」のようす。会員団体のほか、メディアや政党関係者、研究者など100名以上が参加。前半ではSDGsジャパンの三輪敦子共同代表理事が、日本のSDGsの進捗状況に関する「自発的国別レビュー」のプロセスにおける成果と課題を述べた。

若い世代はSDGsとどうやって向き合えばいい?

編集部:

SDGsの概念が浸透する一方で、若い世代が、未来に対する不安や人類の罪悪感のようなものを感じているという話も聞かれます。たとえば、異常気象や地球環境に関する「エコ不安」などです。SDGsは、それにどう答えられるでしょうか。

新田:

SDGsというのは、地球上のすべての人がどういうバランスで地球の資源を使おうか、という議論をしているのだと思います。この本でも紹介していますが、SDGsジャパンでよくお伝えしているのは、経済・環境・社会のバランスを示した「ウェディングケーキモデル」の図です。今のままの過ごし方だと、バランスが悪くて地球がもたないから社会のルールを変えていくしかないよね、ということです。それについて世界で合意された、いちばん持続可能な状態が、SDGsが達成された社会。それは、誰もが安全に自分の可能性を信じて生き続けられる社会です。そのためには、日頃の努力も必要で、わたしたちはそのやり方を学んでいる最中です。これまで貨幣経済、市場経済を最大化させて貧富の差が極端になってしまった社会を、本当に「誰一人取り残さない」社会にするというのならば、社会の仕組みと私たちの日々の生活の両方をひっくり返さないとね、という話です。

編集部:

つまり、自分や人間の存在自体が悪というのは極端な考え方で、バランスの問題なのだから、ひとりひとりが努力するのはむだじゃないということを学んでいる最中なんですね。

新田:

学ぶことは、重要だと思います。知識や経験が増えれば増えるほど、バランスを保つとは何か、意見が対立しても全人格を否定しない、自分の欲望との向き合い方などもわかってくるのではないでしょうか。SDGsの目標を掲げたことをきっかけに、それまで当然だと思っていた価値観が今、大きく変わり始めていて、多くの方が、自分の価値観を見直し始めたということもあると思います。多くのことを知り、人と関わり、現象を見て触れてチャレンジして、最後は自分で「自分のSDGs」を獲得するのがいちばん重要なことかな、と。

編集部:

それは、若い世代へのメッセージにつながりますね。

新田:

自分に壁をつくってしまうのは、良くないというより、もったいない気がしますね。たった数年間や十数年間学んだことで、何かを決めつけてしまう必要はない。おとなだってそうですよ。運良く100才まで生きるとして、50才でもあと半分も考えたり、経験したり、学んだり、できますから(笑)。

編集部:

なるほど、それはそうですね!

世界を変えるも変えないも、わたし達次第

新田:

2015年に採択されたSDGsの「2030アジェンダ」の第50節では、平たく言うと、今まで誰も貧困課題がない世界を作り上げたことはないのだけど、みんながそれをやろうと強く思い行動するなら、わたしたちが貧困を無くした最初の世代になる、と言っています。そして、とはいえ、時間の猶予は残されておらず、このチャンスをのがしたら、地球を救う機会があったのに、地球をつぶしてしまうこともできる、と言っています。結局、世界を変えるも変えないも、わたし達次第だ、ということです。世界のバランスをくずしてしまったのがわたし達なら、1つ1つのチャレンジによってつくりなおすのも結局はわたし達しかいないのです。

編集部:

そのとおりですよね。今、日本のSDGsの状況はどうでしょうか?

新田:

各国の市民社会の人達とやり取りしていて思うのは、日本ほどSDGsという言葉が広まっている国はないということです。意外かもしれませんが、達成度上位の高福祉国家といわれるフィンランドなどでも「SDGs?」という反応だったり。フィンランドはわざわざSDGs施策をしなくても当たり前、ということなのか、日本はSDGsがすぐに浸透するくらい、逆にこれまで社会課題が認識されてこなかったのか、とかも思いますけどね。

編集部:

日本でSDGsの認知度が高いのは、学校でも教えていますし、ほかにはマスコミとか?

新田:

そう、企業も積極的に取り組んでいます。教育現場や民間企業などでのSDGsの認知度が広がっているのは、良いことです。政府には、SDGsの進捗についての全体的な評価をしてほしいと思っています。

2023年、4年に1度のSDGsサミットが開催!

編集部:

ところで今年の9月18日、19日の2日間、国連総会で4年に1度のSDGサミットが開催されますよね。

新田:

はい。今年のSDGサミットは、2015年に始まって2030年に終わるSDGsの15年間の真ん中、折り返し地点です。日本政府からの一般討論演説もあると思います。その後、12月には日本のSDGsに関わる政府の指針が改定されます。わたし達も、SDGサミットにしっかり参加することが大事だと思い、今準備しているところです。「残り7年、息切れしないでがんばろう」と世界中の仲間とやり取りしてきます。4年後の次のSDGサミットになると、2030年以降の議論も始まるかもしれません。

編集部:

2030年以降と言えば……2030年までのSDGsは、2031年以降、どうなっているのでしょうか?

新田:

SDGsでこんなに網羅していても、エネルギーや武器規制のこととか、実はまだ足りないところや踏み込んでいない課題もいろいろあります。SDGsの先の、世界的合意というのが大事ではないでしょうか。SDGsは目標ですから、人の生活が続くかぎり、もし達成されなければ、新たな目標を加えて続けていかなくてはならないし、SDGsが達成されれば、もちろん次の、新しい社会における新しい目標に変わってほしいと思います。

とにもかくにも、わたしたち大人が、世界的合意でみんなが幸せになろうと本気で思い行動を始めるかどうかということですよね。世代を超えて議論していかなければならないと思います。(終)

(編集部 O)

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