みなさん、<偕成社ノベルフリーク>というレーベルをご存じでしょうか?
偕成社のSNSやサイトをチェックしているような方なら、「なんか読み物レーベルだったような」くらいの認知はあるかもしれません。
そんなノベルフリークも2016年の創刊から6年がたち、2022年の9月で、レーベルとして20冊目の本『25センチの恋とヒミツ』(神戸遥真 作/井田千秋 絵)を刊行します。この機会に、偕成社ノベルフリークについて、ちょっとまとめておこうと思います。
初めましての方も、この機会にぜひお見知りおきを!
きっかけは「なんかハードカバーだと重いかな」「児童文庫めっちゃ売れてる」
もともと読み物を多く担当していたのですが、2013年ごろからエンタメ色の強い作品ではハードカバー(表紙がかたいもの)だと、ちょっと内容と本としてのたたずまいがしっくりこないかな、また、他社の児童文庫がよく売れていて、児童文庫を読んでいる人たちには、ハードカバーの本は装丁の感じも違い、手に取りにくいのでは、と考えはじめました。
そのころ上記の考えから、こんなシリーズをソフトカバーで刊行しています。
「パペット探偵団事件ファイル」シリーズ(如月かずさ 作/柴本 翔 絵)
「歴史探偵アン&リック」シリーズ(小森香折 作/染谷みのる 絵)
このようにシリーズだと、ある程度まとまって存在感が出せますが、単発の作品をソフトカバーで出すと書店さんの本棚で埋もれてしまうのでは、という心配もあり、単発もシリーズもありのソフトカバーレーベルを作ればいいのでは、と考えるようになっていきました。
企画書にまとめて、会社に相談したところ、Goサインがでて、2015年ごろスタートしたのでした。
コンセプト
ノベルフリークは
「ものすごく小説が好きな人」の意味。
読者がそんなふうに本をたのしんでくれたらいいなと思い、その第一歩を助けるべく、「入りやすさ」と「おもしろさ」を大切にしてつくっています。
最初に決めたコンセプトは、「手にとりやすいソフトカバーで、読書のたのしさをとどけます。」
四六判ソフトカバー/各200ページ程度/対象年齢:小学校高学年から/本体価格:900円が基本フォーマットです。
レーベルのロゴなどのデザインは、児童書を中心に活躍しているデザイナー・中嶋香織さんにお願いしました。これまでのカバーデザインも、すべて中嶋さんが手がけてくれていますが、作品に合わせた多彩な装丁になっています。
第一期 はじまった、はじめてしまった……!
2016年
わたしたちの家は、ちょっとへんです(岡田依世子 作/ウラモトユウコ 絵)
バンドガール!(濱野京子 作/志村貴子 絵)
二ノ丸くんが調査中(石川宏千花 作/うぐいす祥子 絵)
まっしょうめん!(あさだりん 作/新井陽次郎 絵)
新レーベル立ち上げについて、会社にOKをもらいましたが、本を出すには原稿を書いてもらわないといけません。
もともとお付き合いのあった作家さんや、紹介していただいた方に、レーベルコンセプトをお話しして作品を書いていただきました。
最初の4冊で、装丁などもふくめレーベルのカラーが決まったように思います。
ピックアップ!
『わたしたちの家は、ちょっとへんです』(岡田依世子 作/ウラモトユウコ 絵)
レーベル最初の1冊であるこの本、じつはハードカバーの本として作りかけていて、途中でソフトカバーに変更しました。
刊行時期も調整があり、岡田さんとウラモトさんをお待たせしてしまいました。
3人の女の子がそれぞれの家庭の事情に悩むという、正統派児童文学的な内容でもあるのですが、作品のもつ軽みやユーモアは、この形での刊行がよかったように思います。
第二期 いろんなテーマがでてきたよ
2017年
青がやってきた(まはら三桃 作/田中寛崇 絵)
2018年
二ノ丸くんが調査中 黒目だけの子ども(石川宏千花 作/うぐいす祥子 絵)
夢とき師ファナ 黄泉の国の腕輪(小森香折 作/問七、うぐいす祥子 絵)
まっしょうめん! 小手までの距離(あさだりん 作/新井陽次郎 絵)
2019年
バドミントン★デイズ(赤羽じゅんこ 作/さかぐちまや 絵)
占い師のオシゴト(高橋桐矢 作/烏羽雨 絵)
二ノ丸くんが調査中 天狗さまのお弟子とり(石川宏千花 作/うぐいす祥子 絵)
ぼくのまつり縫い 手芸男子は好きっていえない(神戸遥真 作/井田千秋 絵)
スポーツ、占い、転校生、ファンタジーなど、いろいろなテーマの作品がそろっていきます。
また、刊行ペースについても、安定してきたのもこのころ。
ある程度、定期的に刊行したいと思っており、他の本も担当しつつ、レーベルとして年2~3冊は刊行できるようになってきます。
ピックアップ!
「二ノ丸くんが調査中」シリーズ(石川宏千花 作/うぐいす祥子 絵)
都市伝説をテーマにしたちょっとこわい連作短編集ですが、主人公二ノ丸くんと、二ノ丸くんが気になってしょうがない今日太くんの関係に注目した読者も多かったようす。
石川さんがもともとファンだった、ホラー漫画家うぐいす祥子さんの美麗かつ怖い挿絵も見所です。
第三期 人気シリーズ誕生
2020年
まっしょうめん! 胴を打つ勇気(あさだりん 作/新井陽次郎 絵)
科学でナゾとき!わらう人体模型事件(あさだりん 作/佐藤おどり 絵)
ぼくのまつり縫い 手芸男子とカワイイ後輩(神戸遥真 作/井田千秋 絵)
2021年
科学でナゾとき! やまんばの屋敷事件(あさだりん 作/佐藤おどり 絵)
ぼくのまつり縫い 手芸男子と贈る花(神戸遥真 作/井田千秋 絵)
2022年
まっしょうめん! 木刀の重み(あさだりん 作/新井陽次郎 絵)
科学でナゾとき!星空キャンプ事件(あさだりん 作/佐藤おどり 絵)
25センチの恋とヒミツ(神戸遥真 作/井田千秋 絵)
シリーズ物が多くなってきました。
「ぼくのまつり縫い」シリーズは、作品の舞台となった地域の書店さんで大きく展開していただいたり、剣道がテーマの「まっしょうめん!」シリーズは、剣道専門誌「剣道日本」で取り上げられるなど、反響が大きくなってきました!
ピックアップ!
「科学でナゾとき!」シリーズ( あさだりん 作/佐藤おどり 絵)
本レーベルにて、今一番売れているシリーズのひとつ。
『まっしょうめん!』でデビューしたあさだりんさんが、まったく別ジャンルの科学ミステリーにも挑戦して、みごと読者の心をつかんでいます。
編集的には、毎回、ナゾときの図解のラフを書くのですが、自分の科学への理解(と絵心)がためされるなあ、と思っています。
このラフが
こうなる!
絵を担当している佐藤おどりさんのすごさがわかりますね。(『科学でナゾとき! 星空キャンプ事件』より)
ここまでで20冊になりました!
始めた頃は、こんなに続けられるとは思っていなかったのですが、皆さんに支えてもらってここまでやってこられました。
年末にも、新シリーズがスタートする予定です。
これを機会に、偕成社ノベルフリークを知って、興味のある本を読んでみてもらえればと思います!
(編集部 佐川)