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〈書評〉

『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』(マリア・ホセ・フェラーダ  作/パト・メナ 絵/星野由美  訳)

特別支援学級の現場から〜道しるべにピクトグラムを!

 2020年の幕開けにぜひ、全ての子ども・大人におススメしたい本。単語の意味をシンプルでわかりやすい絵で表現する「ピクトグラム」(以下 ピクト)全ぺージ付き。文章を読むことが苦手でも、ピクトが道しるべとなり、お話の世界へと誘ってくれます。さあ! マヌエルと一緒に、ピクトの世界へピクニックに出かけませんか?

左上にあるのが「ピクトグラム」。「うさぎがきた。みみをなでる。ふわふわ。」の言葉を絵で表現している。

 私は、2017年9月に発売された『いっぽんのせんとマヌエル』 に感銘を受け、2作目の発売を願ってやみませんでした。

 当時、小学校に学校司書として勤務していたとき、日本チリ国交120周年で著者が来日され、初めてピクト絵本に出会って、これは素晴らしい! とピンときたのです。勤務校には特別支援学級もあり、毎週1回図書の授業を楽しみにしてくれる子どもたちでしたが、彼らは、とても“選書眼”が厳しい。司書としてやりがいを感じていました。マヌエルの絵本は、そんな彼らのお眼鏡にかなうかもと思ったのです。

 すぐに、支援学級の担任の先生に話をして、教材研究を重ねました。当日の図書の時間については、作者の「あとがき」にも書かれていたように、まず、今日の活動がいつもと違うことを予告し、そのうえで、視覚的に活動内容を記し、子どもたちに理解・納得をしてもらってから行いました。

 最初に絵本を読むと、非常に反応がよく、特に「せんでぼくのなまえを書く」というマヌエルの“サイン”が描かれているページには「すごーい」という声があがりました。活動は、まず、全ページを「いっぽんのせん」としてつなげ、その線を全員でなぞって楽しみました。次に、個々に、いっぽんのせんを描き、周りに好きなものを描いてよいと指示。線の上下には、花や蝶など自然界の生物を描いている子どもたちが多くいました。

 特筆したいことは、マヌエルの “サイン”に興味を示したことです。一年生も在籍し、やっと文字が書けるようになった子どもたちでしたが、全くそのようなことを感じさせないほど、積極的に先生に、自分の名前のお手本を書いてください! と歩み寄り、全員が“サイン”を書いたのです。今回の2作目にマヌエルの療育の先生が、絵本は「言語と読み書き能力の向上という目的でなく、遊び方や楽しみ方を発展させるために役立つ大切なツール」と記していますが、まさにその言葉の意味を身をもって体験しました。

 『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』のページを開くと、文章の分量は増えているものの、淡々として短く、分量を感じさせることなく、ピクトもくふうされています。たとえば、「まち」「いなか」のピクトがいっぽんの線でつなげられ、一目で内容がわかります。

また、すこし時間の経過があるところは、ピクトもスペースが空けられています。私は、蝶が飛行機の航跡を表しているページが気に入り、早速教材研究を始め、活動を計画しています。

 『さわこのじてん』(北海道新聞社)という本があります。脳性まひにより、肢体不自由の他、知的、聴覚障害があるさわこさん。お母さんが、『じてん』と呼ばれる独自に描いた絵カードを製作。この『じてん』を介して、会話ができるようになる話です。ここでも、絵カード、ピクトの「強み」を知ることができます。

 著者のマリアさんが、1作目のあとがきで、「このひろい世界には、いろいろな人びとがくらす、さまざまな考え方があり、たくさんの感じ方があるのだと、マヌエルのような子どもたちは、わたしたちにおしえてくれているのです。」と述べています。今、世の中では、多様性が叫ばれています。まず、このピクト付き絵本36ページを読むことで、私たちも「視覚」から刺激を受け、考えるきっかけになるのではないでしょうか。

 現在、特別支援教育の仕事に携わっています。障害の有無に関わらず、子どもでも大人でも、凸凹をもっています。つい、凹の部分を上げなくては! と思いがちですが、凸の部分を活かし、伸ばすことの大切さを教えてくれたマヌエル君に、心から感謝します。

 Gracias!


多勢千夏(たせ・ちなつ)

総合商社勤務。結婚により退職。子供の誕生をきっかけに絵本、読みきかせに興味を持ち、小学校の読み聞かせを主体とする地域活動に参加する。日本子どもの本研究会理事。読書のアニマシオン研究会所属。前市川市学校司書。現在、都内小学校にて、特別支援教育に携わる。絵本作家さんからの依頼で、読み聞かせをすることもある。

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