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今週のおすすめ

生きるのがつらくなったときに。中学生のための哲学書『きみはなぜ生きているのか?』

生きるってどういうことだろう。なぜ私はいま生きているんだろう。どうせいつか死ぬのに、生きる意味ってあるのかな。自分にこう問いかけたことがある全ての人に読んでほしいのが『きみはなぜ生きているのか?』(中島義道 作)です。

ひきこもりの高校生に届いた1通の手紙

 高校生になって間もなく、ひきこもってしまったクライくん。夏休みに入ったある日、1通の手紙が届きました。「ニーマント」と名乗る差出人は、これから5日に1度、クライくんに手紙を書くというのです。「ぼくはきみの味方であると信じて、ぼくの手紙をかならず読み、ぼくの言葉にしっかり耳をかたむけてほしい」と言って、その手紙は締めくくられます。

 5日に1度届くニーマントの手紙に綴られていたのは、「過去」「未来」「今」そして「死」について。つまりは「哲学」でした。クライくんは、手紙を読むたびに、ひきこもって鬱屈としている自分の気持ちが軽くなっていくのを感じます。

 「未来」は「保存されていない」、「未来」は「いま」の時点ではどこにも存在しないのだ、という哲学の概念を教わったとき、クライくんはこう感じます。

そこにくりひろげられた世界の光景は、いままでの見慣れた世界の姿とはなんと違ったものだったことでしょうか! こんな世界があるのだ! (中略)それは信じられないほど魅力的な世界であり、信じられないほど恐ろしい世界でした。(中略)たしかに、もうじき二学期が「来る」だろう。そして、数十年後に死も「来る」だろう。でも、それは、とても不思議なことなのだ。そういう方向に考えを押しやると、なんだかそれまで頭の上にどっしり乗っかっていた重い石がコロリところがり落ちたようで、軽々とした気分になりました。

 クライくんは、ニーマントの手紙が待ち遠しくなり、あんなに嫌だった二学期が近づいてくるのが、あまり気にならなくなりました。そして、「哲学をする」ことに、どんどんのめり込んでいくのです。

哲学者・中島義道がやさしく説く哲学の入門書

 本書は、下記の目次の通りに話が進んでいきます。

はじめに
1 きみがいつか死ぬということ
2 未来はどこから来るんだろう?
3 過去はどこへ行ってしまったのだろう?
4 「いま」って何だろう?
5 どうしたらきみは幸せになれるんだろう?
6 どうせ死んでしまうのに、なぜ自殺してはいけないんだろう?
7 きみはだれだろう?
「生きること」を真剣に考えているきみへ

 哲学の基本となる概念を押さえており、まさに哲学の入門書としても最適な本です。作者の中島義道さんは、『哲学の教科書』(講談社)、『孤独について』(文藝春秋)、『不幸論』(PHP研究所)などを著し、現在「哲学塾カント」を主宰しています。本書は、中島さんの哲学論を、中学生向けにやさしく説いたものです。「過去」「未来」「いま」とは何か、「死」とは、「生きる」とは何かについて、クライくんが自分の状況に引きつけて捉え、咀嚼していく過程を読者もいっしょに追うことで、「哲学をする」ということを自然に理解できるようになっています。

 時間に追われた毎日を送っていて「生きる」とは、「死」とは、などと考え込む暇もない、という方も多いでしょう。けれどもたまには、本書を開いて、クライくんといっしょに、人生に悩み、不安になったり、希望をもったりしながら、「哲学して」みませんか。

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今日の1さつ

政権争いも本格的に起こり、大人でも読んでいてドキドキしました。また早く続編が読みたいです。小森さんの小説に出てくる女性は強く魅力的な人が多いですが、今回のサンドラは少し人間味を強く感じ、そこも魅力的でした。また風景が目の前に広がるような描写がとても好きです。(40代)

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