みなさん、木は好きですか? ふだんの生活で、まわりに木はありますか? 『木はいいなあ』(ユードリイ 作/シーモント 絵/さいおんじさちこ 訳)は木のいいところをたっぷりと語った絵本。コルデコット賞を受賞し、1976年の発売から日本でもずっと愛されているロングセラーの作品です。
たった1本でも! 木があると、いいなあ
木が たくさん あるのは いいなあ。
(中略)
たった 一ぽんでも、木が あるのは いいなあ。
木には はっぱが ついている。
はっぱは なつじゅう、そよかぜの なかで、
ひゅる ひゅる ひゅるーっと、くちぶえを ふいているよ。
こんなやさしい語りに、マーク・シーモントの愛らしい絵がそえられ、木がわたしたちの生活にあたえてくれるさまざまなよろこびが、つぎつぎとあげられていきます。
木があれば……秋は落ち葉あそびができるし、枝にのぼるとごっこ遊びも盛り上がるし、じっくり何かを考えることもできます。実のなる木があれば、おいしい果実がとれます。木は、暑い日にすずしい木陰も作ってくれれば、嵐から家を守ってもくれます。
アメリカで1950年代から愛される絵本
本作の原題は“ A TREE IS NICE”。なんとアメリカでの初版は1956年です。
日本での出版時に書かれた解説では、石竹光江さん(読み聞かせなどをしていた団体〈おはなしきゃらばん〉代表)がこのように書いています。「都市化がすすむにつれ、子どもと自然との生活が失われていくのを嘆き、ユードリイ自身が幼い日に経験した木とのすばらしい生活を、子どもたちにも味わってほしいという願いがにじみ出ています」(これはいま読んでも、今日書かれたかのように思えますね)
原書の出版から、実に約70年もの月日がたちますが、「木」という普遍的なものの良さを語るこの絵本は、いつ読んでも色あせず、読者の心にさわやかな風を送ってくれます。
本をとじた後は「木はいいなあ」という気持ちで胸がいっぱいになり、ふだんの生活のなかで木からの恩恵をうけるたびに、この絵本を思い出すことになるのではないでしょうか。
木は、いいなあ!