icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

今週のおすすめ

めぐる季節と人、そして音楽の物語『チェロの木』

森の木を育てる祖父、楽器職人の父を持つ少年「わたし」。あるとき、父にチェロを発注した音楽家と出会い、その音色に心を奪われて……。『チェロの木』(いせひでこ 作)は、めぐる季節の中でつながる人と音楽の物語を、美しく描いた絵本です。
 

森の木、楽器に親しんだ「わたし」は、チェロ奏者のパブロさんと出会う

 物語は、「わたし」が少年時代を振り返る形で進みます。
 
 「わたし」のおじいさんは、森の木を育てる仕事をしていました。おじいさんは「わたし」が学校にあがる前に亡くなってしまいますが、「わたし」のそばにはいつも木がありました。
 

 それは、トウヒ、カエデ、ポプラなど、工房で楽器になるのを待つ、たくさんの種類の。楽器職人である「わたし」の父さんが作るバイオリンやチェロのための木の板の中には、きっと、おじいさんが育てた木もありました。

 あるとき父さんは、「わたし」をある場所へ連れていってくれました。それは、父さんにチェロの製作を依頼したチェリストの家。依頼主のパブロさんは、父さんが作ったチェロを鳴らして言いました。

「まったかいがあった。森が語りかけてくるようだ」
 
 その後「わたし」と父さん、母さんは、パブロさんに誘われて、教会でのパブロさんの演奏会を聴きにいきます。そこで「わたし」はその音色に、そしてチェロに、心を奪われたのでした。
低い2本の弦を同時に響かせて、バッハの曲が教会のゆかをふるわせた。
パイプオルガンの音が束になってふってくるような迫力だった。
それから、音はきゅうにほどけるように明るくなると、
天にむかってかけぬけていった。
高い音で弓がこまかくはねると、
小鳥たちのはばたきが見えるような気がした。
チェロもパブロさんも、曲といっしょにどんどん自由になっていくようだった。
わたしはまばたきをわすれ、とうさんはじっと目をとじていた。

めぐる季節、父さんが作ってくれる「わたし」のためのチェロ

 季節はめぐっていきます。鮮やかな色の葉が舞い、木の実があちこちで落ちる賑やかな秋、雪につつまれたしずかな冬。そしてクリスマスのころ、「わたし」は、父さんが「わたし」のためのチェロを作ってくれていることを知りました。父さんは、「わたし」がチェロに魅せられていることに気がついていたのです。
 
 クリスマスに間に合わなかったチェロは、春になってできあがりました。父さんが「わたし」のために作ってくれたチェロ。その音色とは、どんなものだったでしょう。そして「わたし」は、そのチェロを手にして、どんな風に成長していったのでしょう。
 
 いせひでこさんの美しい絵は必見です。ゆたかな自然や楽器の音色を、ぜひ感じてみてください。

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

推理小説で、怪奇小説で、歴史小説。なんて贅沢な一冊!そしてどの分野においても大満足のため息レベル。一気に読んでしまって、今から次回作を楽しみにしてしまってます。捨松、ヘンリー・フォールズなど実在の人物たちに興味が湧いて好奇心が刺激されています。何よりイカルをはじめとするキャラにまた会いたい!!(読者の方より)

pickup

new!新しい記事を読む