コロナウイルスの感染者もようやく少なくなってきて、中止になっていたイベントも再び開かれるようになりました。先週は講談社絵本賞と産経児童出版文化賞の贈賞式がありました。どちらもリアルでの開催は3年ぶりになります。
5月30日には、第53回講談社絵本賞の贈賞式が赤坂プリンス クラシックハウスで開かれました。ここは1930年に建てられたチューダー様式の美しい洋館「旧李王家東京邸」が当時の状態を復元して生まれ変わった建物です。なんと今回『海のアトリエ』で受賞された堀川理万子さんのご両親が60年前に結婚式をあげられたときの会場でもあるそうです。
黒のドレスに、友人の作家の作品だというモダンな大ぶりのアクセサリーを身につけた堀川さんは、そんなご縁のある会場で、初めての絵本賞を受賞することを喜んでいらっしゃいました。
選考経過を話してくださった絵本作家の高畠純さんからは、心から好きだと思える作品を選ぶことができてうれしい、というコメントをいただき、他の選考委員のみなさんからも直接この絵本についての感想を伺うことができて、編集者としても大きなはげみになりました。
第69回産経児童出版文化賞の贈賞式は、6月3日に明治記念館で行われました。こちらも1881年に宮中外交のための洋風接待をする「御会食所」として建てられた建物をルーツとする由緒ある会場です。
今年の大賞を受賞したのは偕成社ともご縁の深い作家の岡田淳さんでした。「こそあどの森の物語」シリーズ(理論社)の番外編として出された『こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ』でのご受賞です。読者や関係者にささえられてきたシリーズすべてに対して贈られた賞だというふうに受け止めて大変うれしいとお話しされていました。
偕成社からは『ぼくは川のように話す』(ジョーダン・スコット 文 /シドニー・スミス 絵)の翻訳者、原田勝さんが翻訳作品賞を受賞されました。
どんな良い原書もいい翻訳がなければその素晴らしさを伝えることはできないので、翻訳にスポットをあててくれるこの賞の存在はとてもありがたいものです。
式には佳子内親王も臨席されて、この絵本についても、あとがきで「最後に作者が伝える自らの経験や思いも心に残りました」との言葉をいただきました。
選考委員を代表した児童文学研究者の宮川健郎さんは、昨年読んだ児童書の中で、この絵本のタイトルにもなっている「ぼくは川のように話す」という言葉にもっとも心を打たれたと語ってくださいました。
両賞とも昨年の贈賞式はオンラインでの開催だったのですが、このように受賞の理由やお祝いを生の言葉でいただけるのは、また格別にありがたくうれしいことでした。
堀川理万子さん、原田勝さん、ご受賞おめでとうございます!
(編集部・広松)