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編集部だより

問い合わせ多数! 読みきかせに人気の絵本をご紹介します

2021.11.24

編集部では、日々、絵本の読みきかせをしたい、という著作物利用のお問い合わせをたくさんいただきます。新入社員である私は、そういったメールや電話を受けてはじめて手にとる絵本も多いのですが、「この本、入社するまで知らなかった……けど、すごくおもしろい!」と、胸を高鳴らせる瞬間があります。今日はそんな絵本のなかから、いくつかおすすめをご紹介します。

「なんとかなるさ」の精神にいやされる『ぼちぼちいこか』

 はじめて読んだとき、思わず声に出して読みたくなったのが、『ぼちぼちいこか』(マイク・セイラー 作/ロバート・グロスマン 絵/今江祥智 訳)。日本版の発売から、40年以上にわたって愛されているロングセラーです。

 なんといっても、今江祥智さんによる関西弁の翻訳が、とってもチャーミング!

 ひとなつっこい言葉のリズムと、ちょっとひねりを効かせたユーモアが、カバくんのほうっておけない愛らしさを十二分にひきだしています。

ふなのりは、どうやろか。どうも こうも あらへん。

 主人公のカバくんは、船乗り、飛行士、ピアニストと、つぎつぎに新しい仕事に挑戦します。でも、超重量級ゆえになかなかまくいかず……。

カウボーイは、にあうと おもい……おもすぎましたか——。

 失敗したあとの、「どうして?」というとぼけ顔が愛らしくてたまりません。

 ちなみに、原書の英文を見てみると非常にシンプルで、「No.」という言葉が繰り返されています。そちらは、ページをめくるごとに文字が大きくなっていくのが楽しいところ。日英2か国語版の『英語でもよめる ぼちぼちいこか』で見ることができますよ。

 最後まで読むと、なにかとあくせくしがちな我が身の、肩の荷を下ろしてくれるような気分になります。「なんとかなるさ」の精神にのんびりといやされる、シンプルながらあたたかいお話です。

 私は関東の人間なので、不安げな調子でしか読みあげられないのが悔しい限り。ぜひ、関西出身の方に読んでいただきたい絵本です!

台所の野菜が愛おしくなる『ぞろりぞろりとやさいがね』

 冷蔵庫の奥からしなびた野菜を発見したときの後悔はすさまじいものですが、そんな無精な自分を心から恥じたくなった絵本がこちら。ぞろりぞろりとやさいがね』(ひろかわさえこ 作)です。

 主人公は野菜たち。人間に放っておかれ、芽がでてきてしまったじゃがいもや、しわしわになってしまったきゅうりやトマトたちが、ある月夜の晩に怒りのデモ行進をはじめます。

台所で見覚えのある、へろへろの姿に……。

 でも、いくら怒っても、だめになってしまったからだは元に戻りません。そこに、みみずおしょうと、だんごむしのこぞうさんがやってきて、「どう終わるべきか?」を説くのですが……。

 せつないけれど納得のラストに、ほんとうに自然な流れで、食べ物の命を粗末にしてはいけないなあという気持ちがわきあがってきます。それでも、けっして道徳的なお話になりすぎないのが、人気の理由かもしれません。季節問わず、たくさんの読みきかせのお問い合わせをいただいています。

 一人ひとり、個性ある姿形の野菜たちを見ていると、なんだか身近な友だちみたいに思えてきます。お話をとおして小さな生命に共感できるのは、絵本ならではだと感じます。

読みきかせを聞いてみたい絵本No.1『どどどどど』

 最後にご紹介するのは、「五味太郎 音と文字の本」シリーズ(全10冊)。私ははじめて読んだとき、「絵本ってこんなに自由なんだ!」と興奮をおさえきれませんでした。タイトルのとおり、テキストは「ぽぽぽ」や「るるる」など、擬音語と擬態語だけでできています。

 たとえば、『どどどどど』(五味太郎 作)を見てみましょう。

 表紙にいるブルドーザーが、黒い地面のうえを、「どどど」と進んでいき……。

 ガタガタゆれるのにあわせて、「どれどれ」になったり、

 たまに「どみそ」になったりします。

 こうして一文字一文字に集中して読むと、たとえば「ど」は力強いだとか、「ぽ」は明るくて軽いなど、ひらがなの一音一音にもなんとなく共通のイメージがあることを思いだして、日本語のおもしろさにわくわくしてきます。

 私の体感では、五味さんの作品のなかでも『まどからおくりもの』についで問い合わせの多いシリーズなのですが、こちら、読みきかせの難易度としては最高レベルでは? と想像します。自分だったら、どういう声色で、どんなリズムで読むだろうか……と考えると、力量が試される気分です。

 お話自体の受け取り方も自由にゆだねられているぶん、読み手の個性がでるのではないでしょうか。何人かで回し読みなどしても、とてもおもしろそうです。

 ということで、おはなし会があったらリクエストしてみたい絵本No.1、でした。

 このところは、集まって絵本を読んだり、声にだして絵本を読む機会も、なかなか持ちづらい期間でした。そんなときはひとりでも、小さくつぶやきながらページをめくってみると、またちがった絵本の世界がひろがって楽しいかもしれません。

(編集部・中嶋)

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