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編集部だより

日常にひそむギリシア神話

 偕成社から出ている本のなかで、今も手に入るいちばん古い本をご存じでしょうか? 『星と伝説』(野尻抱影・著)です。星にまつわる伝説や神話を世界中からあつめ、1961年に刊行されて以来、愛されて56年となりました。
 この本には、アイヌの人たちや、マウイの人たち、中国大陸などにつたわる伝説も掲載されているのですが、やはり星座といえば……という感じで、ギリシア神話由来のお話がたくさんあります。
 星座といえばギリシア神話、とか言いつつ、ギリシア神話ってよくわからなくないですか? ちょっと(だいぶか)昔だし、名前もむずかしいし、遠い話だと思ってません? 
 でも、そんなことはないんです! ギリシアから遠く離れた私たちのまわりにも、ギリシア神話要素は多分にふくまれているのです。
 
まずはこちらをごらんください。
 
新宿の交差点、アトラスの像があるお店が見える
 
 新宿にある、とある交差点。向かいのお店をよくみてください。
大きな時計をかついだ男の人の像が見えます。この人、じつは、ギリシアの神さま、アトラスです。『星と伝説』にも「怪力ヘルクレス」というお話のなかに出てきます。それによると、
 このアトラスは、大むかし、大神ゼウスを相手に戦争をしたため、そのばつとして、永久に天をかつぐことになったのです。
とあり、実際は時計でなく天球をかついでいたようです。それにしてもゼウスの罰って強烈ですね。ちなみに、その後アトラスは天球をかつぐ役をかわってあげる、とヘルクレスに言われて大喜びするのですが、結局だまされてまた天球をかつぎつづけるはめになりました。かわいそうです……。
 
 まだまだ街にはギリシア神話要素があるはず、と日本橋までやってきました。
 
日本橋三越、入り口前。マーキュリー像が見える
 
 これはすばらしい! 日本橋三越の入り口上にいました。この方は、マーキュリー(メルクリウス)という、厳密にいうとローマ神話からきている像のようです。マーキュリーはギリシア神話の「ヘルメース」と同一人物といわれています。ゼウスの息子で、羽のはえた靴をはき、神々の伝令役として活躍した神さまです。商人や旅人の守護神なので、ここにあるのも納得!です。
 
 『星と伝説』のなかでも大活躍。メズーサ(髪の毛がへびの人)をやっつけにいくペルセウスに、じまんの靴を貸す(やばい、その靴だいじなんじゃないの? マジでいいの?)という泣けるエピソードが紹介されています。
エルメスの看板と、地下鉄の入り口

ヘルメースといえば…と思いましたが、こちらは創業者の方の名字から来ているみたいでした。 全然関係ないですが、右側の地下鉄入り口の看板、そうとうかっこよくないですか……。

 このマーキュリー、こんなところにもいました。

メトロ銀座駅改札内にあるマーキュリー像2体

 東京メトロ銀座駅の改札です。あまりに突然いたので、見つけた時に変な声がでました。なんだかシュッとした感じです。昭和26年にいろんな駅に設置され、地下鉄のシンボルとなっていたそうです。笠置季男さんというかたの作品です。銀座駅だけでも4人もいるみたいです(上はそのうちのふたつ)!商人と旅人の神様、ぴったりですね〜。

 ちょっと趣向をかえて、こんなのはどうでしょう?

西新宿にあったオブジェ。7つの石がたちならぶ。

 新宿でみつけました。長沢英俊さんというかたの「プレアデス」という作品です。プレアデスは、ギリシア神話に出てくる7人姉妹。月と狩りの女神アルテーミスのお付きの人びとです。『星と伝説』では、オリオンとのエピソードが紹介されています。7人の姉妹たちを見かけた大男オリオンが、ちょっとからかってやろうと思って姉妹たちを追いかけます(ひどい)。逃げ込んできた7人をアルテーミスがハトに変えてやり、隠すのですが
 大神ゼウスは、これを見ると、はとたちを、いつまでも空におきたいと思って、星にかえてしまいました。
(けっこうひどい…)そうして、彼女らは星になり、プレアデス星団となりました。この星団は、日本ではすばるとよばれています。ちなみにこの姉妹の長女のマイアは、先述のヘルメースのお母さんです(もうこのへんからよくわからなくなってきますね)。
 
 まだまだあります。どんどん紹介します! 中野に行ったときにみつけました。連続であったのでやや興奮しました。左にある羽の生えた馬が有名な「ペガスス」、右の勇敢な男性がアトラスの兄弟「プロメテウス」です。
 
中野駅周辺にいたペガススとプロメテウス
 
 このうち、『星と伝説』に出てくるのはペガススのほうです。
 この天馬は、ギリシアのペルセウスという勇士が、生きたへびの髪の毛をもった女のばけもの、メズーサの首をきりおとしたとき、その血が岩にしみこんで、そこからとびだしたといわれます。
ということで、その後、ベレロフォーンという若者が怪物キメーラを倒しに、この天馬(ペガスス)にのっていきました。ベレロフォーンはぶじにキメーラをやっつけるんですが、若者らしく調子にのってはしゃいだことで、ゼウスの怒りにふれてしまいます。
 おこった大神ゼウスは、1ぴきのあぶをはなちました。このあぶがとんでいって、天馬をさしたので、馬はおどろいてベレロフォーンをふりおとし、そのまま天へかけのぼりました。
 ベレロフォーンは、まっさかさまに大地へおちて、足をおり、目までつぶれてしまいました。
こうして、天馬はペガスス座となったのです。いい話……?
 
 いかがでしたでしょうか。ギリシア神話、意外にひそんでいますよね?? 
 みなさんも『星と伝説』を読んで、日常にひそむギリシア神話さがしにチャレンジしてみてください〜!

もうどんな像を見ても「ギリシア神話?」と思うようになってしまったのですが、このライオンはたぶんちがいます。

(編集部 秋重)

◎文中に出てくるギリシア神話の神々の名称は、『星と伝説』にならいました。

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今日の1さつ

真っ黒な表紙にこれ以上ない直截な言葉「なぜ戦争はよくないか」の表題にひかれ、手にとりました。ページを繰ると、あたたかな色彩で日常のなんでもない幸せな生活が描かれていて胸もホッコリ。それが理不尽な「戦争」によって、次々と破壊されていく様が、現在のガザやイスラエルと重なります。(70代)

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