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編集部だより

外濠公園、真夏のセミ百景

2019.08.07

 こんにちは! 編集部の刑部(おさかべ)です。
 
 いやいや、今年の関東地方の梅雨は長かったです。しかし、梅雨が明けたとたんに、この猛暑。
 仕事はいくらでもある?ので、会社には毎日来なければなりませんが、近ごろでは朝から気温も30℃を超え、毎日の楽しみ、四ツ谷から市ヶ谷の会社に歩くことも、かなりツラくなってまいりました・・・
 
 実際、こう暑いと、公園にもたいして虫はいないんです。聞こえるのはセミの声ばかり・・・というわけで、今回は「外濠公園、真夏のセミ百景」と題し、暑いなか、蚊に刺されながら、必死で撮った(おおげさ!)セミの写真や動画を並べて見ますので、お時間と少しでも興味のある方は見てみてください。
 ご覧になって、何かで「なるほど」「そうなんだ」「勉強になったよ」と思っていただければ、望外の喜びでございます。
 
 いつものとおり、四ツ谷駅で降り、外濠公園へ入っていきます。朝の9時ぐらいです。
 
 
 ご覧、というかお聴きのとおり、もうこんなにセミたちが鳴いていますよ。セミの声のシャワーの中、公園を歩いて行きます。
 
 
 さ、二つの動画の共通点はどこでしょう?・・・
 
 はい、ではそこの、背の高い、まるい眼鏡の白いTシャツの男の子、答えをどうぞ。
 「どちらの動画も、後半あるいは中盤以降に、リュックを背負ったクールビズ風の男性が暑さをがまんして会社へ歩いていく姿がフレームインしてくる」
 ピンポーン!大正解!・・・って、ちがうわい! ここは明らかに、そういう答えは求めてないのはアナタもわかるでしょう・・・これは僕が都会の自然のスバラシさを一生懸命レポートする内容で・・・
 
 正解は「どちらの動画も、音声を聴くと何種類かのセミが鳴いているようだが、ミンミンゼミの声がめだつ」でした!
 ミンミンゼミの写真はこちら。鳴いている姿の動画も載せておきますね。
 
 
 ミンミンゼミは、緑色と黒のまだらのボディに透明な羽。鳴き声は、その名のとおり「ミーンミンミンミンミーン」をくりかえす感じです。
 
 また、しばらく歩いていくと・・・おや、ちがう鳴き声が聞こえてきました・・・
 
 
 「ミーンミンミン」に混じって、「シャンシャンシャンシャン」と、早いビートの力強い鳴き声が聞こえるでしょう・・・そう、この鳴き声は、クマゼミです。しかし、どうやら樹上の高いところで鳴いているようで、声はすれども姿は見えず・・・です。
 
 さて、じつはこのクマゼミ、ぼくがこの外濠公園を毎朝歩くようになった十数年前には、夏、その声を聞くことはありませんでした。
 なんでかって? クマゼミはそもそも南方系のセミで、温暖な気候の西日本以南がおもな生息域です。そのため、西日本から東海地方には多数いますが、昭和の時代までは、関東地方では神奈川県が北限で、東京都内ではほとんど見られませんでした。しかし近年、地球温暖化や植樹の移動などにより、その分布が茨城県まで北上しているといわれています。
 
 それにしても今、外濠公園は、セミがまっさかりです。あちこちに羽化したあとの抜け殻も見られます。
 
 
 しかし、なかにはこんなものも・・・
 
 
 うーん、かわいそうです! 何らかの原因で、羽化に失敗したのです・・・しかし、自然にはムダがありません。さっそくアリたちが群がっています。
 あるいは、こんなものも・・・
 
 
 セミはふつう、夜に羽化するもの。朝9時にこんな段階とは・・・おいおい、ボヤボヤしていると、カラスに見つかって、食べられちゃうよ!
 もちろん、成虫もたくさん。
 
 
 この木に、セミはなんびきいるかな? ってやってる場合じゃない。さすがにもう会社に行かないと・・・
 
 
 ・・・さてさて、忙しくしていると、一日はあっという間。今日は月曜日だし、もう帰ろう。
 それにしても、夏は遅い時間まで明るいねえ・・・外堀通りを歩いて四ツ谷駅へ。
 
 
 朝も夜も、セミたちは鳴きつづけていますね・・・あら、でも今夜は思ったより気温が低く、どこかしら秋めいたような雰囲気も・・・
 
 ところが、「秋めいた雰囲気」と僕の心に感じさせたのは、気温だけではなかったのです。この動画の音声をお聴きください。
 
 
 自動車や風の音が入って聴きづらいかもしれませんが、聞こえるでしょう、「オーシーツクツク オーシーツクツク オーシーツクツク」という鳴き声が・・・そう、ツクツクボウシの鳴き声です。
 ツクツクボウシは夏の終わりに出てくるセミなので、この「オーシーツクツク」を聴くと、夏の終わりを感じて、胸がキュンとくる方も多いのではないかと思います。
 
 外濠公園の中に入ると、こんな鳴き声も聞こえてきました。
 
 
 この鳴き声は、セミの鳴き声だということはわかっていても、何のセミの声かがわかっていない方も多いのではないかと思います。この「ミューーーーー」とも「ツィーーーーー」とも聴きとれる感じの長い持続音は、ニイニイゼミの鳴き声です。
 
 ニイニイゼミは、夏に一番乗りで鳴き出すセミですから、ツクツクボウシと同じ時期にその鳴き声を聞くのは、ちょっと変な感じがします。今年の夏は、ひょっとすると短いのかもしれません。
 ニイニイゼミの姿はこちら。
 
 
 あ、紹介し忘れていましたが、「ジリジリジリ」という、アブラゼミの声も聞こえてきましたよ。風情ある電車の音とともに、アブラゼミの鳴き声を楽しんでください。
 
 
 アブラゼミの姿はこちらです。
 
 
 さらに公園内を四ツ谷駅方向へ。
 
 
 なにかが見られそうな予感・・・
 
 
 いたいた! セミの幼虫・・・何年も土の中でくらして、今夜、羽化するために、木の幹を登っているんだね! たどたどしい足取りに、ガンバレ!といいたくなりますが、近くをアリンコがうろうろしているのが気になる・・・もしかしたら、幼虫が羽化失敗するのを期待しているのかもしれませんな・・・
 
 さあ、もう電車に乗るので、セミの話題はこれぐらいで終わりにしますが・・・そういえば、僕が前に担当してつくった本で、セミをテーマにした本があります。
 その名も『都会にすみついたセミたち』。
 
 この本は、僕の昆虫の師匠でもある、昆虫写真家の海野和男さんと、海野さんと仲よしで、僕も大好きな写真家の武田晋一さんが共著でつくった本です。
 じつは海野和男さんは、外濠公園の近くにすんでいらっしゃるのですが、東京の街中にセミが増えていて、とくに外濠公園にミンミンゼミが増えていることを、以前からふしぎに思っていました。かたや武田晋一さんは、九州にすんでいるのですが、都会・福岡の街中に、クマゼミが増えていることをふしぎに思っていました。そこで武田さんは、海野さんに連絡して、それぞれ福岡と東京で、そのなぞときに取りかかります・・・
 
 よければ、読んでみてくださいね。なお、この本は、「虫から環境を考える」という6巻シリーズの1冊で、ほかにも、興味深いテーマの本がいくつもありますよ。
 
 では、またお会いしましょう!
 
(編集部 刑部 聖)

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