みずみずしい朝の森と、密やかな夜の森。『もりのあさ』(出久根 育 作・絵)は、朝と夜、それぞれの森の美しさを、女の子の豊かな感性を通して描いた一冊です。

におい、音、空気。全身で感じる森の美しさ
朝もやが残るころ、女の子は木いちごを摘みにひとり森へ向かいます。
くるみの葉っぱの、甘酸っぱいにおい。足の裏に感じる、しっとりとしてやわらかな苔に覆われた地面。草はらの朝露に映る、小さな森の姿。風に揺れるトウヒの木が、ギギギと軋む音……。誰もいない朝の森には、澄みきった空気と豊かな気配が満ちています。

いつも木いちごを摘むお気に入りの場所で、女の子は目をつぶって夜の森へと思いをめぐらせます。花々は静かに息づき、フクロウは大きな目を開けて森を見張っている。眠る小鳥たちはどんな夢を見ているのだろう。女の子の想像は、静かで幻想的な夜の森へと読者を誘います。

第31回日本絵本賞受賞作
『あめふらし』『マーシャと白い鳥』などで知られるチェコ在住の絵本作家・出久根育さんによる本作は、第31回日本絵本賞を受賞しました。美しい筆致で描かれる、朝の清々しい光と夜の幻想的な気配が見事に響き合います。
ページをめくるたびに、まるで自分自身が森の中にたたずみ、胸いっぱいに空気を吸い込んでいるかのような感覚に包まれます。木々の香り、動物たちの気配、足元の苔のやわらかな感触までがあざやかに伝わり、五感がゆっくりと開かれていくようです。
新緑が芽吹く春はもちろん、森の気配を感じたくなったときに、季節を問わず手に取りたくなる絵本です。


