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絵本&読み物案内

障がいを持つ子どもたちと周囲をリアルに描く、丘修三の傑作。1986年発売『ぼくのお姉さん』

2026.07.13

2026年5月、85歳で亡くなられた丘修三さんは、長年養護学校の教師をつとめ、障がいを持つ子どもたちが登場する児童文学作品を数多く手がけてきました。今回は傑作短編を5編収録し、4つの賞を受賞した『ぼくのお姉さん』(丘 修三 著/かみやしん 絵)をご紹介します。

ダウン症の姉が家族にもたらす、あたたかな感動

 表題作「ぼくのお姉さん」の語り手は、小学5年生の正一。17歳のお姉ちゃんのひろはダウン症を持ち、少し前から福祉作業所で働いています。学校で、自分の兄弟について作文を書く、という課題がでた正一は、どう書いたらいいのか頭を悩ませていました。お姉ちゃんといるとおもしろいし、優しいところもあって、お姉ちゃんはいた方がいいと思っている。でも、お姉ちゃんの行動に腹を立ててしまうこともあるし、家に遊びに来た友達にお姉ちゃんを笑われて傷ついたこともあり、その感情は複雑なのです。
 
 
 そんな正一をよそに、今朝のお姉ちゃんは嬉しそうです。仕事に向かうパパに「パパ、ああくてって(早く帰ってきて)。パパ、ああくね、ねっ!」と念を押し、どうしたのかたずねるママや正一に、「えとあんく。」「えとあん。ママ、パパ、ちょうちゃん(正ちゃん)く。」と繰り返します。一体なんと言っているのか、家族の誰にもわかりません。
 
 夕方、福祉作業所から帰ってきたお姉ちゃんは、ママが夕食を作っているのを見て泣き出します。「ごあんらめ(ご飯だめ)!えとあんく!」大の字になって泣き叫ぶお姉ちゃんを見て、正一はピンときました。「ママ、お姉ちゃん、レストランっていってるんじゃないかなぁ。」そう、お姉ちゃんは、家族でレストランに行こうとしていたのです。
 
 さて、お姉ちゃんはなぜ、家族みんなでレストランに行こうとしているのでしょうか? お姉ちゃんの行動とそれを受けとめる家族の姿が、丁寧かつリアルに描かれ、胸を打たれる物語です。
 

人間の醜さ、人生の苦しいことや辛いことも描き出す、嘘のない短編集

 本作にはほかに4つの短編が収録されています。どのお話にも、障がいを持つ子どもが登場しますが、語り手は家族だったり本人だったりと異なります。あたたかな気持ちで読み終わるお話もあれば、苦い思いを抱えたまま終わるお話もあります。お話ごとに、登場する子が持つ障がいの内容は異なりますが、どれもとてもリアルで、その描写力は長年養護学校に勤めていた丘さんならではです。また、物語としても、ぐいぐい読ませる展開やセリフ回しで、丘さんの文章力の高さに圧倒されます。
 
 障がいを持つ子どもたちと、その周囲の人々の心の動きを通して、人間そのものを描き出した丘さん。最後に、丘さんが書いた本作の「はじめに」を引用します。
人生は、たのしいもの。
けれども、くるしいことや
かなしいことや、心をなやますことも
また、たくさんあります。
人は、そのようなさまざまなことを
体験しながら、ほんとうの〈人間〉
になるのだと思います。
ひとの心のいたみがわかる
〈人間〉に。

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