『れいぞうこ』など、人気のある赤ちゃん絵本の数々を生みだしてきた作家、新井洋行さん。
2022年から刊行している『おなまえおしえて』『すきなたべものおしえて』のシリーズが、どんなふうにできあがったか、ちょこっとですが、ご紹介いたします!
新井さんとの打ち合わせでは、娘さんたちとのエピソードをあれこれ聞かせていただくのが何よりの楽しみ! あるとき、娘さんが保育園に通っていたころ、先生から「♪あーなたのおなまえは?」と聞かれて、名前をうれしそうに答えてた、というお話を聞きました。そうそう、子どもも大人も、だれかに会って最初に聞かれるのって、「おなまえ」ですよね、と、話が盛りあがり、この絵本の最初のダミー(本の形にした下描き)をいただきました。
名前を聞くというシンプルな展開、すぐに本ができあがりそうですが、そういうわけにはいきません。
小さな子どもたちに向けた絵本の場合はとくに、どんなふうに反応するかは本当に未知数。大人の頭で考える以上の気づきがあるので、いつも実際にお子さんたちに何度も試し読みをしています。偕成社は1階に「おはなしのへや」というスペースがあり、近所のお子さんたちが遊びに来てくれるので、いつもはそこでご協力いただいていました。が、『おなまえおしえて』のダミーをいただいたあとに、コロナ流行で「おはなしのへや」がやむなくお休みに……。そこでお願いしたのは、偕成社社員の小さなお子さんや、甥っ子姪っ子さんたち! おともだちにもいっしょに、ダミーを読む様子を動画に撮っていただき、新井さんと一緒に見せてもらうことにしました。
最初のダミーは、絵を見てぱっと答えがわからないようなめずらしい動物たちが次々登場するものでした。名前をたずねてみて、はじめて「わかった!」となるのがいいかなあという意図があったのです。それに、めずらしい動物の名前を知るのって楽しいかも、と。
でも、ダミーを見ている子どもたち、なんとなく、途中ですこーし集中力がなくなるような雰囲気……。読んでくれている大人も、知らない動物の名前がちょっと読みにくそうかも……? そんな様子を感じて、やっぱり、もうすこし身近な動物たち、人気がある動物たちがいいのかな、と、何度かいろいろなパターンを作って、一種類だけとてもめずらしい動物を入れる、という構成に落ちつきました。
これまでのように、目の前で反応を見せていただくのとは少し違いましたが、子どもたちがとてもリラックスしていて素の様子を見せていただけるのが、とても参考になりました。
2023年4月の新刊『すきなたべものおしえて』も、またこの方式でみなさんにご協力いただき、登場する動物や流れが完成しました。ちなみに、一緒に本を作った仲間でもあるお子さんたちには、オビにご登場いただいています。
質問して、答えて、わらって……。お子さんとごいっしょに楽しいひとときをおすごしいただけたらうれしいです。
(編集部 U)