駄菓子屋の床下でおもちゃの「おなおしや」をいとなむネコを描いた『おなおしやのミケばあちゃん』。担当編集者が、絵本や作者について語ってくれました。
表紙の三毛猫が迫力満点のこの絵本、駄菓子屋さんの床下で、ねこのミケばあちゃんが、こわれたおもちゃを直す「おなおしや」をやっている、というお話です。
床下にためこまれた材料と、ミケばあちゃんの冴えた手業で、どこか懐かしいようなおもちゃたちがまた元気を取り戻していくさまは圧巻! 暗がりにひろがる別世界にひたる心地よさがあじわえます。
著者の尾崎玄一郎さん、由紀奈さんはご夫婦で、おふたりでともに作品を作りあげてこられました。
尾崎さんご夫妻の絵本『おしいれじいさん』をはじめて読んだとき、今までのどの絵本とも似ていない、強烈ななにかを感じたのを覚えています。
その謎が知りたい、そもそも絵と文の共著ってめずらしい、とおもい、感想のメールをお送りしたのが始まりでした。
おふたりが絵画教室をなさっているアトリエにうかがった最初の日の記憶は、ついこの間のことのように鮮明です。おふたりとも東京芸大大学院修了のタッグ、そして、玄一郎さんはおひとりでかなり前から絵本を作っていたこと、売り込みをかけて初出版まで16年もかかったこと、その間にかなり絵本に対する考え方が熟成されたこと、など、たくさんのおはなしをうかがって、わたしの中の謎がすこしずつ晴れていきました。
そして、共著のため、時にケンカになってしまうこと、それでもいいものを作るために突き詰めていく、ということもうかがいました。
おふたりとのうちあわせは、いつも玄一郎さんのよく通る声と、由紀奈さんの冷静な突っ込みに、笑いあり議論あり、のあっという間の時間です。
今回の、ミケばあちゃんのラフを見せていただいたとき、お話はすばらしいのだけれど、もう少しねこが可愛くなりませんか? とお願いしたところ、「ミケばあちゃんは心が可愛いのであって、老猫でくたびれているし、目つき鋭いのが個性なのです。そういうねこなんです」と断られました。万人受けなどすこしも考えていないからこそ、これまでの強烈な絵本たちが生まれたのだと、謎がまたちょっと解けました。
偕成社での絵本は『おにろうのおつかい』に続いてこれで2作目になりますが、これからもおふたりの絵本の魅力の謎にせまって、とびきりの絵本をつくっていただけたらと思っています。
(編集部・U)