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偕成社文庫100本ノック

第4回(プレイバック中!)

びりっかすの神さま

『びりっかすの神さま』岡田淳 作

 岡田淳さんの作品には隙間があります。物語の世界への隙間です。
『びりっかすの神様』を久しぶりに読み返して、完全にその隙間に入り込んでしまいました。「ただ読んでいる」だけではなく、「体験している」といった感覚に近いでしょうか。そういう物語です。大人も子供も関係ないですね。楽しんで隙間にはまってください。

 さて、今回の『びりっかすの神様』について。
「一番になることより、もっともっと大切なことって何でしょうか?」
それがこの本のテーマです。とても難しい。子供に聞かれても即答できる自信が私にはありません。しかし、くたびれた背広とよれよれのネクタイ、背中に羽のはえた20㎝ぐらいのおじさんである「びりっかすさん」が、その答えに導いてくれます。

 この物語は、テストも給食も、なんでも競争させられる4年1組でのお話。そして、「びりっかすさん」はびりの人にしか見えない不思議な神様(?)です。
 主人公の始(はじめ)は「びりっかすさん」に会うために、わざとテストで0点を取り続けるのですが、やがてクラスのみんなにも「びりっかすさん」が見え始めます。一緒にテストで最低点をとったり、給食も食べ終わるのが一番遅い人に合わせたり。そんな事をしている内に次第とクラスがまとまっていくのですが、やがて「わざと負けるっていいことなのかな」と考えるようになって……。

 物語のラストは心がふるえます。自分たちで考えて自分たちで出した答え、「びりっかすさん」のまっすぐな言葉、そのどれもが響いてきます。学校や社会は、考えるということを放棄しても進んで行ってしまうもの。『びりっかすの神様』を読みながら、4年1組の1人になって、自分だけの「一番になることより、もっともっと大切なこと」を探してみてください。

 競争社会に身を置く大人の皆さんにもオススメの1冊ですよ。

(販売部 大西)

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毎日をまじめにコツコツ生きるトガリネズミを見ていたら、自分の日常ももしかしてこんなに静かな幸せにあふれているのかも、と思えました。海に憧れて拾ったポスターを貼ってみたり、お気に入りのパン屋さんで同じパンを買ったり。駅中の雑踏やカフェでふとトガリネズミを見かけそうな気がします。(40代)

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