「懐かしのアニメベスト100」等に必ず登場する「ペリーヌ物語」。この物語の原作は、19世紀のフランスの作家エクトール・マロが、子供のために書いた小説『家なき娘』です。
フランス人の男性とインド人の女性との間に生まれた少女ペリーヌが、両親をなくしたあと、出自を隠したまま祖父の工場で働き、祖父の愛を勝ち得るまでの物語です。読んでいて待ってました! と声を上げたくなる「ツボ」要素満載の展開なので、ツボに沿って流れをご紹介しましょう。
物語のツボその1 両親と死に別れ、異国の地で独りぼっちになる
冒頭、11歳の少女ペリーヌがインドからフランスに戻る途中で孤児となり、行き倒れ寸前にまでなります。もちろん、ここで物語は終わったりしません。
物語のツボその2 実の祖父に、孫娘であることを隠したまま仕える
父方の祖父の営む紡績工場にたどり着き、祖父ヴュルフラン氏の工場に名前を偽って、勤めることになります。というのも、ペリーヌの父親は結婚が原因で勘当されていたからです。
物語のツボその3 知恵と努力で自分の居場所を見つける
ペリーヌは、工場で働きながら、一人で暮らそうと決心。廃屋をみつけて、模様替えをします。鍋や皿は、捨ててある空き缶を利用、靴は葦の茎を叩いて繊維にしたものを編んで作り、たった一人で生活を始めるのです。お給料から食費を除いてあといくら使えるか細かく計算しながら、身の回りのものを整えていきます。『家なき娘』上巻の「18章 喜望島」「19章 エスパドリーユ」「20章 肌着作り」「22章 ディナーごっこ」の箇所をぜひお読みください! ペリーヌが工夫を重ねながら、ひとり暮らしを始める様子に、かならずワクワクするはずです。
物語のツボその4 聡明さが道を開き、愛する相手に一目置かれる
ペリーヌはその賢さとバイリンガル少女(フランス語と英語が話せる)である利点を活かして、次第に工場で頭角を現します。少女ながら、大事な商談の通訳を務め、祖父のヴュルフラン氏の心の支えとなっていきます。
物語のツボその5 同胞のために尽力し、彼らの支持を得る
ペリーヌはヴュルフラン氏の片腕として活躍する一方、工員たちの待遇改善のためにヴュルフラン氏に働きかけ、宿舎と保育所をつくりかえます。ヴュルフラン氏の相続人で悪役の甥っ子たちはこの辺で退散。
物語のツボその6 ハッピーエンド
最終章は、ヴュルフラン氏とペリーヌが祖父と孫として手を取り合って、ハッピーエンドです。ふたりが、過去の失われた時間を取り戻し幸せに暮らすことが予感され、物語は終わります。
センチメンタルで出来過ぎの物語であることはわかっていても、読み返すたびに(10回以上読み返しています)、おなじところでワクワクしてしまうのは、「物語のツボ」を正確に押さえた小説だからだと思います。
読むたびに新しい発見もあります。近代化の進む紡績工場で働く工員たちの劣悪な労働条件の描写は、当時のフランス社会の抱える問題でした。「自分の時代を生き、時代とともに歩まねばならない。」が信条だったマロは当時のフランス社会の闇を書かずにはいられなかったのでしょう。
最後に、まずは『家なき娘』をその次にはぜひ一度『家なき子』そして『ロマン・カルブリス物語』と読んでみてください。19世紀に、マロが夢見たユートピアが見えてきます。
(編集部 別府)