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偕成社文庫100本ノック

第98回

新十津川物語

新十津川物語1『北へ行く旅人たち』川村たかし 著

 十津川村は奈良県にあります。
 では「新」十津川村はどこにあるでしょうか?

 正解は、北海道。
『新十津川物語』は、奈良県の十津川村から、北海道へ開拓民として移住した9歳の少女フキの一生を描いた作品です。
 明治22年、記録的な大雨に見舞われた奈良県十津川村では、大規模な土砂崩れが発生、多くの村人が家族と家屋敷、田畑を失います。村の再建が難航するなか、北海道への移住の話が持ちあがり、村の四分の一にあたる2600人あまりが、北海道へうつります。
 土砂崩れで親を亡くしたフキもまた、兄弟たちとともに移民団に加わります。移民団は、割り当てられた土地を「新十津川」と名付け、開拓を進めていきます。

 と、書くとなかなか敷居の高いお話のように聞こえますが、これがおもしろいのです!
 荒野に放り出された移民団の人々が、限られた資源を使ってどのように村をつくっていくのか、害虫の大発生から日露戦争、太平洋戦までさまざまな出来事に翻弄される人間たちのドラマが、荒々しくも美しい北海道の風景とともに描かれ、読み応え十分です。

 主人公のフキも、いっしょに北海道に渡った兄が身持ちを崩して出奔してしまったり、自身が知り合いの借金の保証人になってしまったりと、波乱万丈な人生を歩みます。
しかし、ときに怒り、ときに悲しみながらも、逆境にもくじけず、自分のできることをして、一日一日を生き延びていきます。
 その姿から、歴史に名を残すような偉人ではない、市井の人たちの強さが伝わってくるのです。

 全10巻の長編ですが、ものはためしに1巻目、ぜひ読んでみてくださいね。

(編集部 佐川)

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