2017年も2か月が経ち、酉年にもだいぶ慣れて来たこの頃かもしれませんが、今回は鳥にまつわる話を紹介したいと思います。
安房直子さんの『銀のくじゃく』ですが、これは1975年に筑摩書房さんから刊行されていた同名の童謡集を再編集し文庫化したもので、表題作の「銀のくじゃく」のほか「緑の蝶」、「青い糸」など計7つの短編が収められた短編集になっています。
1つ1つの作品につながりはありませんが、共通して描かれているのは“何かに夢中になりすぎることの怖さ”と“異世界の不気味さ”です。
異世界と言っても遠い国の話というわけではなく、日常の中に入口があり、彼ら彼女らが何かを強く思った時に誘ってくるのです。
表題作の『銀のくじゃく』では、若くて腕の良く仕事熱心なはたおりが、粗末な糸と道具で単純な実用品しか作れない日々に悶々としているところにある晩、ふと一人の老人が現れるところから始まります。その老人は、はたおりに「上等の材料を使ってぜひ織ってもらいたい物がある。」と持ちかけました。はたおりは怪しいとも思いつつ付いて行った先で「緑のくじゃくの入った立派な旗を織って欲しい」と言われ引き受けるのです。はたおりが作業を始めて数日経ったある夜、はたおりのもとに4人の娘が現れ、「銀のくじゃくが見たい」とねだりました。
そうここは廃れたくじゃくの王国だったのです。王国の復活の為に緑のくじゃくを望む老くじゃくと、遠くの世界に連れて行ってくれると言われる銀のくじゃくにあこがれる娘たちとの板挟みになったはたおりは、表に緑で、反対側に銀で、一羽で両方の姿を描くことを思いつきました。これまでやったことのない難儀な仕事にはたおりは寝食も忘れ夢中でとりかかります。すべては四人のお姫様のために…。そしてまた何日かが過ぎ、ついに旗を完成させますが、そこにはたおりの姿はありませんでした…。読めた方も多いかもしれませんが、結末は是非ご自身でご確認ください。
私のお気に入りは『秋の風鈴』です。
ある日“ぼく”のところに「おたくの風鈴がうるさくて長い間寝不足です」という匿名の手紙が届きます。この風鈴のおかげで?物事が上手くいっていたぼくは、匿名であったことが気に入らないのもあり無視します。ところが数日後、今度は郵便受けからあふれるくらいの風鈴に対する抗議文が来たのです。しぶしぶ風鈴をしまったぼくですが、特にお礼や新しいハガキが届くわけでもなくすっきりしない日々を過ごしていたある朝、僕は全てを悟ったのです。切ない話が多い中、とてもほっこりさせられるお話ですよ。
(総務部 今村)