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偕成社文庫100本ノック

第55回

屋根裏部屋の秘密

『屋根裏部屋の秘密』松谷みよ子 作/司 修 絵

 先日亡くなられた、松谷みよ子先生が公害や戦争をテーマに二人の兄妹を通して描かれた「直樹とゆう子の物語」のシリーズの第4作です。
 それを知らずに読むと、いやそういう話と分かっていてもなお、『屋根裏部屋の秘密』という少しミステリーめいたタイトルの響きと、物語後半に明かされるほんとうの“秘密”の内容とのギャップに衝撃を受けるでしょう。

 物語は夏休みにゆう子が、はとこのエリコから花姫(地名)の山荘への誘いの手紙を受け取ることから始まります。
 エリコのじじちゃまが喘息のエリコの為に信州の山の中に作った山荘、エリコやゆう子は子どもの頃からその山荘によく遊びに行っていました。そこの二階の上にはじじちゃまが書斎として使っていた小さな屋根裏部屋がありましたが、そこはいつもカギがぴちんとかけられており、「開かずの屋根裏部屋」となっていました。
 ところが、製薬会社の偉い人だったエリコのじじちゃまが亡くなると、色々な人がその屋根裏部屋のカギを探し開けようと試みます。
 エリコもまた、じじちゃまに亡くなる前に言われた「花姫の書斎の……はお前に、若い世代に任せる。」という遺言を受けて秘密を探ろうとするのです。家中を探しまわった彼女たちはついに古い鏡台の引き出しからカギを見つけますが、いざその部屋に入ってみるとそこには机といすの他には辞書と段ボールが1箱と古い布の室内靴があるのみだったのです。ゆう子とエリコは拍子抜けしてしまいますが、その段ボールこそエリコのじじちゃまが戦争中に満州のハルピンで七三一部隊という非人道的な実験をやっていた秘密部隊にいた時の資料だったのです。戦争を知らない孫たちは、祖父の死をきっかけに知らされた戦中の罪をどう受け止めるのか…。
 エリコ、ゆう子、直樹とそれぞれが自分なりの方法で受けとめ、それを伝えようとしていきます。フィクションでありながら七三一部隊自体は実在した部隊であり、どのようなことをしていたのかはリアルに描かれています。

 タイトルや表紙のイラストとは結びつかない、少し重い内容のお話ではありますが、ストーリー展開はとても面白く、読みやすく書かれています。奇しくも今年は終戦から70年という節目の年でもありますので、戦争について今一度、この本を通して考えてみませんか?

(販売部 今村)

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今日の1さつ

描かれている町のモデルのような田舎に住んでいるわけでもないのに、読んでいると思い出す感覚や匂いがあります。こどもの頃の放課後などです。外で遊んでだりして、都会にいても自然を感じとる力が備わっていたのかなと思います。とてもすてきな感覚を思い出すことができました。(20代)

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