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絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第4回

子どもが公園から帰りたがらない! どうしたらいい?

「あと1回だけだよ!」
「もう帰るよ!」
「おいていっちゃうからね!」

 公園にかぎらず、保育園から帰りたがらない子、「ごはんだよ」と言ってもなかなか部屋にもどってこない子、お昼寝なのにちっとも寝ない子……いろんな子がいますね。

 なにをかくそう、2才のわが孫も、いつもわたしの家から近所にある自宅へ帰るときにママを怒らせる。

「まだ、かえらない」
「じゃあ、本を1さつ読んだら帰るんだよ」
「いやだ、かえらない!」
「あした保育園だから、もう寝ないとだめでしょ!」
「いやだ!」
「いいかげんにしなさい!」

 孫とママはこんな会話をいつもしている。

ほんとになかなか帰らない子で、わたしが困ってます

 わたしがはたらく保育園ではこんな場面も。帰る時間に、玄関ホールから泣き声がきこえる。お母さんは、「子どもがくつもはいてくれない」とこまっている。

 「まだ保育園にいたいらしいんです。置いていっていいですか?」とお母さん。

子どもは決して、お母さんやお父さんを怒らせたいわけでも、こまらせたいわけでもない。

 この時期の子どもたちの区切りのつかなさは、もうあきらめるしかないレベル。子どものほうは、怒られることはわかっているのに、すました顔で「いやだ」と言う。こうなると、ますますおとなはヒートアップする。人前で感情的に怒りをあらわすなんて、子どものとき以来かもしれない。

「まだ帰らない!」とおむかえにきたお母さんを、絵本の棚までひっぱっていく2才さん

 子どものほうも、生まれてからたった2、3年しかたっていないのに、本気で怒る。そのようすを見て、親は「なんで言うこときいてくれないの?」と本気で悩んでいる。

 この「本気」というところが、「ひと」を育てている以上、しかたないことなのかも。

 子どもは、全身で泣いたり、怒ったりと、おとながこまる形で表現する。もっと遊びたいという気持ちを、おとなの時間がないときでも抑えない。

 決して、お母さんやお父さんを怒らせたいわけでも、こまらせたいわけでもなく、たぶん、自分でもうまく折り合いがつけられない。言葉だけは、「あと1回やったら、やめるね」とちゃんと答えられるのに、行動はともなわない。

びしょぬれのまま、公園から帰ることに……

 そうなんです。この時期の子どもって、思っていることと行動がともなわなくて、切ない思いを繰り返している感じがするのです。これをくりかえして、折り合いをつけることを覚える。

 これはこの時期の子にとって大事なことだと思うのです。

 怒りながらも、決して見捨てないお母さんやお父さんにくらい、自由な自分を表現したいよね。

相手が子どもであっても、ちゃんと理由を話し、子どもにきいてみる。

 ということで、対処方法はあまりないかも。行動が変化したり、気持ちをさっと切り替えられたときに、「きょうは、すぐ帰れるね。お母さん助かる!」と本心を言ってみるとか、ごはんつくったり、お風呂に入ったり、しなければならないことはちゃんと伝えるとか。

 相手が子どもであっても、ちゃんと理由は話していく。それから、「もう、帰れる?」ときく。この「きく」というのは、どんなときも大事かもしれません。子どもって、ちゃんと対応してもらえることに敏感なものです。

お母さんやお父さんにふだんの保育を見てもらう保育参加のひととき。のんびり過ごしています

 ひとつ大事なのは、怒ったり泣いたりしているときには、なにを言っても効果がないということ。落ち着いてから、さらっと言うのがいいような気がします。

 まったくちがう話をして切りかえるというのもいいかな。

「お月さまでてくるんじゃない? 見に行く?」
「晩ごはん、ハンバーグにしようかな」

 こんなふうに、「もう帰るよ」とは言わずに、ちがうことを伝えて手をつなぐとか。

 とはいえ、この時期はそんなに長くは続かないので、ゆっくり子育てしましょうか……。

公園から帰らなくて困る、そんなときにこんな絵本を読んでみるのもいい。

『また おこられてん』(小西貴士 作、石川えりこ 絵、童心社)

 この絵本からは、子どもには子どもなりの思いがあるっていうことがジーンと伝わってきます。1才や2才の子ども向けではないけれど、きっとさまざまに伝わることがある1さつです。

『ゆっくりがいっぱい!』(エリック・カール 作、工藤直子 訳、偕成社)

 子どもといっしょにこの本のページをめくったら、ゆっくりするのもいいものだと思えるかも! 読んでいる途中で子どもがほかの遊びをはじめちゃったら、お母さんお父さんはさいごまで「ゆっくり」見てくださいね。

安井素子(文・写真)


安井素子(保育士)

愛知県に生まれる。1980年より、公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年近く。1997年から、4年間、椎名桃子のペンネームで、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、園での子どもたちとの日々を、エッセイにつづる。書籍に、名古屋の児童書専門店メルヘンハウスでの連載をまとめた『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)がある。現在、保育雑誌「ピコロ」(学研)で「きょうはどの本よもうかな」、生協・パルシステムのウェブサイトで「保育士さんの絵本ノート」を連載中。保育・幼児教育をめぐる情報を共有するサイト「保育Lab」では、「絵本大好き!」コーナー(https://sites.google.com/site/hoikulab/home/thinkandenjoy/picturebooks)を担当している。保育園長・児童センター館長として、子どもと一緒に遊びながら、お母さんやお父さんの子育て相談も受けてきた。現在は執筆を中心に活動中。

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お年玉として本屋さんで好きな本を選んでいいよ!と言ったら、たくさんある本の中から娘が自分で選んできました。帰宅して読んでみると地下の世界のお話。田舎の我が家にももぐらの穴がたくさんあるので家の下もこうなっているのかな?!と家族で想像しながら読みました。とても楽しい時間でした。(4歳・ご家族より)

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