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絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第32回

災害から子どもを守るため、保育園でどんな備えをしているか知りたい!

2024年1月1日に能登半島地震がおこりました。地震はいくら気をつけていても、どうにもならない自然災害です。わたしも保育園の園長という立場から、「もしも」のときにどうするか、考え出したら眠れなくなることがあります。

保育園ではどんな備えをしている?

保育園では、毎月避難訓練を行います。災害や火災が起きたときに、おとながどう動くか確認し、子どもたちが落ち着いて行動できるよう、さまざまな想定をしながら訓練を実施しています。

わたしがつとめる園では、緊急地震速報のチャイムの音を放送で流す避難訓練も行っています。チャイムのあとに「訓練です」と言うと、小さな子たちも静かに落ち着いて避難できるようになってきました。

防災頭巾は、子どもたち全員の分を用意しています。避難で緊急に外へ出たときに、雨が降っていたり、風が強かったりすることがあるかもしれません。頭を守るだけでなく、防災頭巾があれば、子どもたちを少しでも風雨から守ることができて、また、寒いときには多少、暖をとれるのではないかと考えています。夏の暑いときは、避難先の校庭で熱い地面に直接座らず、防災頭巾の上に座ることもできるかもしれません。

保育園では、避難訓練の年間計画を作成しています。さらに、2024年4月からは「安全計画」を各施設で作成することが義務づけられます。

「安全計画」では、安全点検の実施に関することなどはもちろんのこと、バスでの送迎時や、散歩などの園外活動時の安全確保についても計画を立てます。

保育園で起きた重大事故は、ニュースでも取り上げられてとても関心が高いと思いますが、現場では、子どもの最善の利益を守っていくためにさまざまなことが考えられています。わたしがつとめる保育園は、新しい園ということもあり、救急車の呼び方や避難時の職員体制など、いくつものマニュアルを作成しました。

小さい子にとって大事なのは、非常時に安心できるおとながそばにいること。

わたしの尊敬する方が「万が一を心配して子どもたちの9999の可能性を奪うことはできない」と語られたことがあり、とても印象に残っています。ふだん、子どもたちが自分で見つけた遊びに集中できるように園の環境を整えていますが、「命」につながることは絶対に手を抜いてはいけないと考えています。

しかし、小さい子にとってなんと言っても大事なのは、何かあったとき安心できるおとながそばにいるということ。日ごろの子どもとの信頼関係が大事だということは、東日本大震災のあと、震災を経験された現地の先生たちからお話をうかがう中で感じたことです。

大変なことが起こっても、助けてくれる人がいるから大丈夫という安心感の中で、子どもたちを育てたいと思っています。

読むと子どもたちが安心できそうな絵本。

子どもたちは自らさまざまなことを吸収してのびていく可能性も持っています。いつ未曾有のできごとが起こるかわからないからこそ、「自分で考える力」をつけられるよう、日々、保育を行っています。

こんな絵本も、災害に対応する力になるかもしれません。

『だいじょうぶ だいじょうぶ』(いとうひろし・作 絵、講談社)

主人公の「ぼく」は、大きくなるにつれて、怖いものや不安なことを知っていく。でも、いつもおじいちゃんが手をにぎって「だいじょうぶ だいじょうぶ」と言ってくれる。ぼくは、世の中怖いことや悪いことばかりではないと気づき、「こんどはぼくのばんだ」と、おじいちゃんにその言葉を返すことができるようになります。わたしも「だいじょうぶ だいじょうぶ」と子どもたちに伝えたいと、この本のページをめくるたびに思います。もちろん、「だいじょうぶ」と唱えるだけでなく、そう言えるための備えが保育園では必要です。

『まえとうしろ どんなくるま? 4 さいがいで かつやくする くるま』(こわせもりやす・作 絵、偕成社)

能登半島地震では、断水が長引き、給水車に長蛇の列ができている場面がニュースで報道されました。災害時に活躍する車がこの本に登場します。このシリーズに登場する働く車のそばに、車を動かす人が描かれていて、説明も入っています。「この車は水の中でも走れるんだね」とわたしが言うと、子どもたちは「ほんとだ、たくさんひとがのってるね」「このひとたちが、みんなをたすけてくれるんだね」と返してくる。働いている人を見て「なにしてるの?」ときかれるので、会話がはずみます。こうやって助けてくれる人たちがいることが、子どもたちの中にちゃんと記憶されていくと思います。


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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今日の1さつ

推理小説で、怪奇小説で、歴史小説。なんて贅沢な一冊!そしてどの分野においても大満足のため息レベル。一気に読んでしまって、今から次回作を楽しみにしてしまってます。捨松、ヘンリー・フォールズなど実在の人物たちに興味が湧いて好奇心が刺激されています。何よりイカルをはじめとするキャラにまた会いたい!!(読者の方より)

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