保育園で子どもたちと生活していると、けがをしたり、転んだり、けんかになったり……さまざまな事件がおこります。
そんなとき、保育園では「運よく大きなことにつながらなかったね」ですまされることはありません。
「ヒヤリハット」として職員の会議にあげて、園全体で対策をとります。もちろん、実際にけがや事故につながったときは、改善策を考えて二度とおこらないようにします。県や市に報告の義務があるケガもあります。
とはいえ、小さなけががなくなることはないし、けんかがなくなることもありません。
万が一を心配して過保護にしすぎるより、小さなけがなら「だいじょうぶだよ」ということを子どもに伝えるのが大事で、子どもの成長にとって必要なことでもあると、考えています。
子どもは「よかったこと」を見ていることが多い
クラス担任をしていたとき、年長クラスのかずくんが、転んで大きなすり傷を作ってしまったことがありました。血がにじんでいて、いかにも痛そう。「痛かったね」と声をかけると、目に涙をいっぱいためながら「いやあ、骨は折れてないよ」と言うので、笑ってしまったことがあります。
子どもたちって、「よかったこと」を見ていることのほうが多いと感じます。
お正月に、獅子舞を園で舞ってもらったときのこと。生きているように舞う獅子に嚙まれて泣いてしまう子もいたのに、次の日には「かまれたよねえ」「かまれても、血はでなかったよね」「こわかったねえ」「ししまい、生きてたんじゃない?」と楽しそうに子どもたちみんなで話題にしていました。
子どもは、あしたに向かって生きているから、おとなが思う以上にいろいろなことを「だいじょうぶ」と思っているのだろうなあと感じるエピソードでした。
絵本『よかったね ネッドくん』は、子どもたちの気持ちにぴったり
保育園で『よかったね ネッドくん』を読んだときは、子どもたちが「ネッドくん、めっちゃ、うんがいいじゃん」「うんがよすぎだよね」とうなずきあっていました。
この絵本は、運がよかったり、悪かったりがくりかえされる内容で、運がいいときはカラー、運が悪いときはモノクロのページになっています。
びっくりパーティーの手紙がきた。
でも、たいへん! パーティーはとおいとおいフロリダでやるんだって。
よかった! 友だちが飛行機を貸してくれた。
でも、たいへん! 飛行機が途中で爆発。
こんな具合にお話が進んでいき、最後はトラに追いかけられて、穴を掘って逃げるネッドくん。たどりついた先が、びっくりパーティの会場! という展開の絵本です。
「よかったこと」も「たいへんなこと」もでてきますが、子どもたちにとっては、「よかったこと」だけが心に残るんだなあと思いました。
年中の、りこちゃんが「びっくりした。こんなところからネッドくんがでてくるから、びっくりパーティなんだね」とつぶやいていました。なるほど、そうだったのか! と一緒に笑って絵本を閉じました。