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絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第3回

食欲の秋……なのに、子どもがぜんぜん食べてくれません!

 一生懸命作ったごはんを子どもが食べてくれないって、本当におうちの方は心が折れますよね。

 少しでもバランスを考えた食事をさせたいと思い、手間も時間もかけたのに、プイって平気で横を向いたり、一度口に入れたものを出してしまったり。もう少し大きくなると、平気でつくえの下に落として、「にやっ」と笑ったり……。

「もう! いいかげんにしなさい!」
「ちゃんと食べないと大きくなれないよ!」
「そんな子にはもうおやつをあげないからね!」

 さまざまな否定語やおどしや、怒りの言葉がわきでてきて、そんな大人げない自分を「だめな母親だ・父親だ」と責めてしまったり(あ、こんなことを言っているわたしも、2歳の孫のいたずら食べに、「もう!」って怒ったりしていますから)。

ごはんにふりかけだけ、たまごごはんだけだって大丈夫!

 食べなくて、あまりやせているようなら医師の診断が必要ですが、たいていの場合は何かを食べていて大きくなっていくのが子どもです。

 怒ったり、おどしたりしてもあまり効果はないので、どう、あきらめるかですね。

 あらかじめ量を減らすとか、おなかがすくということが心配なら、ごはんにふりかけだけだって、たまごごはんだけだって大丈夫。

 わたしが思うのは、子どもたちには、やはり素材のわかるものをちゃんと食べさせてあげるのが大事だということです。

 好んで食べるからといって、添加物のとりすぎは小さい子にはよくないし、ファストフードもできるだけさけたい。

 加工品やお惣菜などを購入するときは、この食べものに何が入っているのか、表示を見る習慣は必要だと思います。できるだけ、添加物の少ないものを選びたいですね。

料理のお手伝いも効果的。「自分で作った!」というのは小さい子でもわかります。

 意外と子どもたちは素材そのものを料理したものが好きだったりします。サツマイモやニンジンを蒸しただけのものでも、おいしい!

 今年度4月に開園したわたしが園長をつとめる園では、小麦、卵、乳を使わない食事を提供しています。午前のおやつもありません。アレルギーのある子もみんな同じテーブルでいただきます。必然的にハム、ソーセージなどの練りものは使えず、いつも素朴な和食が中心です。

 午後のおやつはおにぎりやおだんごなど手作り。11時のお昼ごはんの時間になると、1歳の子でも自分から座ってはやくたべたいアピール! みんなもりもり食べます。午前中たっぷり遊んで、おなかがすくのでおいしく食べられるようです。

 お料理のお手伝いというのも効果的です。クッキングは1歳児から経験させたいと思っています。「自分で作った!」というのは小さい子でもちゃんとわかります。

 ということで、試行錯誤しながら子どもの個性に合わせた対応するしかないかな……。

なんでもいうことを聞き、好き嫌いなく食べる優等生の子どもは見たことがない。

 朝、あんまり食べない日があったら、保育園で昼におかわりして食べているかもしれません。

 園との連携が、小さい子にはとても必要です。先生にちゃんと「朝ごはんをあまり食べなかった」ということを伝えたら対応してくれるはずです。

 保育園との連絡ノートがある場合は、その日の家族の朝ごはんのメニューではなく、その子が食べた量をちゃんと書くことが大事です。

「食べてません!」
「ケーキ」
「ポテトチップス」

など、保護者が書いてくれた朝食の欄を見て驚くこともありましたが、保育園側としては、正直なのがうれしい。ぐずったりしたときに、おなかが空いたんだなと配慮することができます。

おうちの方が保育園を体験する保育参加での一コマ。お母さんに「あーん!」。

 食べる量は、身長ののびに合わせて、体重さえ増えていれば、心配しなくて大丈夫!

 なんでもいうことを聞き、好き嫌いなく食べる優等生の子どもは見たことがない。それと同じように、なんでも完璧にこなせるお母さんは、いそうでいないものです。

食べものをテーマにした絵本を見るのも楽しい。

 食べものをテーマにした絵本をいっしょに読むのもいいですね。

『いただきまあす』(わたなべしげお 文・おおともやすお 絵、福音館書店)

 この本に登場するくまくんの食べかたはすごい! これをおうちの人が許せたら、目の前の子どもたちも、もっと食べるようになるのかも……?

 さすがにこのお行儀がいいとは言えない食べかたをまねされたら困ると思ったのか、「これ、読んでもいいんですか?」と、心配そうにわたしにきいた新任の保育者もいました。でも、子どもたちに読んだら、

「あー、だめだよ」
「おぎょうぎわるいよ」

と、くまくんに教えてくれていたそうです。子どもたちはちゃんとわかっているんですね。

『とびだす・ひろがる! たべものえほん』(古川正和 作 構成・本信公久 絵、偕成社)

 たくさん料理がでてくる絵本をひらいて、「おいしそうだね」「これ食べたいね」と食べるまねをしたりするのも、とてもいい時間。

 絵本なら、イライラすることなく子どもたちと食べることを楽しんだり、食に関心を持ってもらうこともできます。次から次へとおいしい食べものがでてくるこの絵本が、子どもたちは大好き。きょうのメニューの参考にもなるかもしれません!

安井素子(文・写真)


安井素子(保育士)

愛知県に生まれる。1980年より、公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年近く。1997年から、4年間、椎名桃子のペンネームで、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、園での子どもたちとの日々を、エッセイにつづる。書籍に、名古屋の児童書専門店メルヘンハウスでの連載をまとめた『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)がある。現在、保育雑誌「ピコロ」(学研)で「きょうはどの本よもうかな」、生協・パルシステムのウェブサイトで「保育士さんの絵本ノート」を連載中。保育・幼児教育をめぐる情報を共有するサイト「保育Lab」では、「絵本大好き!」コーナー(https://sites.google.com/site/hoikulab/home/thinkandenjoy/picturebooks)を担当している。保育園長・児童センター館長として、子どもと一緒に遊びながら、お母さんやお父さんの子育て相談も受けてきた。現在は執筆を中心に活動中。

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