働きもののトガリネズミは、毎日きまった予定をこなし、つつましく暮らしています。でも、その日常の中には、幸せが散りばめられているのです。きょうは、日々を大切にしたくなる、みやこしあきこさんが初めて手がけた絵童話をご紹介します。
トガリネズミの、ささやかな日常3話
本作には、3つのお話が収録されています。1つ目は「トガリネズミのいちにち」です。
トガリネズミは働きもの。毎朝6時きっかりに起き、7時8分の電車に乗って、職場である空港に向かいます。
お昼ごはんは、12時5分前、同僚のトムさんと一緒に食堂へ。夕方5時になったら仕事を切り上げ、パン屋さんに寄ってから帰宅し、夜は曜日ごとに決めているいろんなことをしながら、ゆっくり過ごします。
月曜日は、洗濯。火曜日は、体操。水曜はアイロンがけ、木曜日はルービックキューブ……。おや、今日はひとつ、いいことがあったみたいです! それは……?
2つ目のお話「トガリネズミのあこがれ」では、休みの日に近所のガレージセールで手に入れたあるものから、遠い世界へ想いを馳せます。3つ目のお話「トガリネズミのともだち」では、1年の終わりに、トガリネズミの家に遠方からふたりの友人がやってきて、毎年恒例のパーティーがひらかれます。
おだやかな幸福を感じられる、手元に置いておきたい物語
トガリネズミの暮らしは実にささやかで、ほんのり寂しげでもあります。でも物語全体を通して、そこには幸福感がただよっています。毎日をきちんきちんと過ごしながら、その合間に寄り道をしてみたり、好きなことに取り組んでみたり。そんなトガリネズミの姿は、大人・子ども問わずせわしない毎日を送りがちなわたしたちに、日々の中にもちいさな幸せがあることを気づかせてくれます。
最後のお話でトガリネズミは、遊びに来た友人たちを見送ったあと、しずかになった部屋でこうつぶやきます。
「うん、いいとしだった」
しみじみとそう言って1年を締めくくれたら、こんなに幸せなことはありませんね。
お守りのように、手元に置いておきたくなる一冊。大切な人への贈り物にもおすすめです。シックで愛らしい装丁にも注目してみてください。