2019年10月7日に亡くなられた、和田誠さん。イラストレーターやエッセイストとして知られる和田さんが、偕成社で童話『おさる日記』(村上康成 絵)の文章を手がけられているのはご存じでしょうか?
今回は、ユニークだけれどちょっとこわい、ウィットに富んだこの作品をご紹介します。
はじまりは、お父さんがお土産におさるをくれたこと。
お話は、すべて「ぼく」の日記形式で進んでいきます。
一番はじめの×月×日は、こんな風です。
×月×日
おとうさんがかえってきたので横浜までむかえにいった。おかあさんといきました。おとうさんは日にやけてまっくろで、わらうと歯だけ白くみえた。おとうさんの船は二万トンだから、港にいるほかのよりおおきいからかっこよかった。半年みないうちにおおきくなったな、おとうさんはいった。おとうさんはおみやげをぼくにくれた。おさるをくれた。まだちいさいおさるです。
パーサーとして船に乗っているお父さんが、半年ぶりの帰国でお土産にくれたのは、小さなおさるでした。かわいいおさるに夢中の「ぼく」は、おさるに「もんきち」と名前をつけてかわいがり、日々、日記を書きます。
「×月×日 学校からかえるともんきちはにわにいてぶらんこにのっていた。」
「×月×日 もんきちはまいにちバナナをたべていますが、きょうはじぶんでバナナをむいてたべた。だんだんあたまがよくなるのでたのしみです。」
もんきちは、だんだん賢くなっていくようです。
できることが増えていき、毛もうすくなっていくもんきち。
日記が進むと、もんきちの毛はうすくなっていきます。そして、冷蔵庫を自分で開けたり、テレビをみて笑ったり……。姿やふるまいが変わってきました。
さて、いったいもんきちはどうなっていくのでしょうか?
和田誠・文、村上康成・絵。かくれた名作に再注目!
おもしろくてちょっぴりこわい、目が離せないストーリーはもちろん、この本が珍しいのは、イラストレーターとして著名な和田さんが文章のみを手がけているということ。児童書を書かれていたのを知らなかった! という方も多いかもしれません。
数多くの名作絵本を手がける村上康成さんとタッグを組んだ、豪華な一冊です。ぜひ和田誠ワールドに迷い込んでみてください。