icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

本のイベント

「おれたち、ともだち!」20周年記念原画展、作者のおふたりのトークショーレポート

2018年5月10日(木)〜20日(日)、東京・神保町にある児童書専門店「ブックハウスカフェ」の2階で、「おれたち、ともだち!」シリーズ(内田麟太郎 作/降矢なな 絵)の20周年記念原画展が開かれました
その期間中の5月16日(水)と18日(金)には、おふたりそろってのトークショーを開催。満員御礼、大にぎわいだった当日の様子をまとめてお伝えします。(一部、16日と18日の内容が前後しますことをご了承ください。)
 

5月18日撮影

『ともだちや』誕生のきっかけは?

 トークショーではまず、20周年を迎えた「おれたち、ともだち!」シリーズの記念すべき1作目、『ともだちや』のことをおふたりが語りました。
 
 ご自身の絵本のつくり方を「いいかげん」(!)とおっしゃる内田麟太郎さん。ナンセンスなこと、「変なこと」がお好きで、まじめなものはつくりたくないそうです。「ともだちや」は、ある日仕事部屋にひとりでいるときにふと生まれた言葉だそう。「ともだち」という単語はふつうだけれど、「ともだちや」は聞いたことがない。なかなか創作に結びつかない日常の中で、誰も聞いたことがない「ともだちや」という言葉を思いついたことが嬉しかったそうです。
 
 その言葉の思いつきがあって書いたのが、絵本『ともだちや』。原稿はしばらく眠っていたそうですが、当時の偕成社の編集者から依頼を受けて、『ともだちや』の原稿を送ったところ、すぐにシリーズ化しましょう!」と言われて驚かれたそうです
 

5月16日撮影

 
 一方そんな『ともだちや』の絵を担当されることになった降矢ななさんは、実はシリーズ化の予定など聞かされていなかったのですって。キツネとオオカミなら描きやすそう! という気持ちで、とても自由に絵をつけられたとのこと。おなじみのキツネのあのヘンテコリンな格好について、文章には書かれていないけれど、内気なキツネが1時間100円でともだちになるという商売「ともだちや」を始めたのだから、思い切った格好をしなければ、自分のカラをうち破れない! と考え、ご自身も「好き放題」、あの変な格好をさせたのだそうです。
 

どんなお客さんと出会うかわからないので、ちょうちんを持ったり(夜行性の動物もいますものね)、浮き輪をつけたり(これで水にも入れます!)……。降矢さんオリジナルのキツネの姿だったのですね!

  「変なことが好き」という内田さんも、この奇想天外なキツネにはさすがにびっくりしたそうです! 「自由に描いてくださいと伝えたけれど、自由にもほどがあるキツネが届いた!」との言葉には、会場も笑いに包まれました。でも、そのインパクトがとてもよかった
 それまでまじめ(?)な絵を描かれる機会の多かった降矢さんも、自分の中に「まじめな自分」と「ナンセンス好きな自分」がいて、内田さんと組んだらそのナンセンス好きな自分を出せるのでは、という予感あって、あのキツネを描かれたとのこと。みごとにその予感があたったのですね。
 

5月18日撮影

最新刊『さよならともだち』のこと

 シリーズ13作目、最新刊の『さよならともだち』についても、おふたりそれぞれの思いが語られました。
 
 『さよなら ともだち』の最後、キツネとオオカミはうれし涙を流して抱き合います。内田さんとしては、ずっと意識していたナンセンスな雰囲気やユーモアをれず、ラストもおもしろおかしくしたかったそうですが、物語の流れから笑いで終わらせるのは不自然と感じ、このような終わり方になったそう。内田さんは「降矢さんの絵を見て、わたしの中の『ともだちや』が変わっていく。同じように、読者のみなさんの声によっても変わっていく。ともだちやのキツネとオオカミが成長していくんです」とおっしゃっていました
 

5月16日撮影

 
 一方シリーズを通して、文章にない部分も読みとき、絵に描いてきた降矢さん。『さよならともだち』では驚きの出来事があったそう!
 それは、降矢さんが絵の中に描きこんだホタル(気がつかないくらい控えめですが、いるんです。探してみてください!)。なんとなく描きこんだそうですが、実は敬愛する俳人の金子兜太さん作の俳句に、こんな句がありました
 
 おおかみに 蛍が一つ 付いていた
 
これは後から気がついたことで、本当に偶然の一致。ご自身がオオカミの気持ちに寄りそうようにホタルを描きこんだことと重ね合わせ、感じ入るものがあったそうです
 

裏表紙の絵は降矢さんが勝手に描いている!? 『ともだちおまじない』の絵にもひみつがたくさん!

 5月18日(金)のトークショーでは、降矢さんの絵のことがもう少し踏み込んで語られました。
 
 内田さんいわく、シリーズ全体、裏表紙の絵は「降矢さんが勝手に描いている」そうなのです(確かにお話の筋とは別の場所ですものね)。たとえば『ともだちくるかな』の裏表紙では、オオカミが誕生日ケーキのろうそくの火をフーッと吹き消していますが、その息のつよさに、ヒューン! とキツネは飛んでいってしまっています。これは、童話「3びきのこぶた」をモチーフにしているとのこと
 
 
 また、担当編集者のお気に入りは、最新刊『さよならともだち』の裏表紙。2匹はお話のラストで服をぬぎすて、振り回していたのですが……裏表紙では、お互いが着ていた服を交換して着ているのです。試合の後に汗だくのユニフォームを交換して称え合うサッカー選手のように、キツネとオオカミの友情が見えるシーンですね。
 
 
 そんな風に遊び心の見える裏表紙ですが、シリーズ中で唯一お話ではなく、五七五の句がたくさん収録されている『ともだちおまじない』は、さらに降矢さんの遊び心が炸裂! 1作目『ともだちや』の裏表紙でキツネとオオカミのおばかなポーズをちょっとうらやましそうに見ていたカモの子が、この『ともだちおまじない』の中でそのポーズをまねしているのです! そんなひみつがあったとは! 『ともだち おまじない』は読み聞かせがしにくいと言われることが多いんですが、シリーズの表にはない世界がつまった1冊なんですよ」と、降矢さんもイチオシの巻なのだそうです。
 

登場キャラクターのひとり、ヘビさんは芸術家。この絵を見ると、なんと窓の外にエッフェル塔が……!?(見えない方はぜひ本物でチェック!)ヘビさん、念願のパリを訪れていたのです。なんとも細かな裏設定です。

 ますます広がる「ともだちや」の輪

 最後はおふたりからうれしいお知らせが。「おれたち、ともだち!」シリーズの原画もたくさん紹介されるでしょう。絵本ギャラリー(仮称)が、2020年、内田さんのふるさと福岡県大牟田市にオープン予定とのこと! 動物園のお隣に建設されるそうで、これからクラウドファンディングで資金を集める予定もあるそうです。楽しみなニュースに会場も沸き、熱気に包まれたままにトークはお開きとなりました。

5月16日撮影

 
 トークの後は、参加者の方限定でサイン会も開催され、会場は2日間とも大にぎわいでした! 名コンビのお2人が揃った、貴重で楽しいトークショーでした。

 

(販売部 松野)

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

わたしはパペットたんていだんもよんでいます。友だちが「怪盗王子チューリッパ」を読んでいたのでよやくして見ました。わたしがすきな場面は、みんなで宝をみつけるところです。(8歳)

pickup

new!新しい記事を読む