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本のイベント

『めいわくなボール』制作秘話! 牡丹靖佳さん×担当編集者

2021年9月5日〜26日、京都の絵本専門店きんだあらんどさんで、『めいわくなボール』(牡丹靖佳 作)の原画展が開催されました。その会期中に行なわれた、作者の牡丹さんと担当編集者のトークイベントのようすの一部をご紹介します!

──牡丹さんとのお付き合いをさかのぼって調べてみると、2014年の後半ぐらいからでした。斉藤倫さんのデビュー作『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)の挿絵を見て、すてきだなぁと思って、『おうさまのおひっこし』や『たまのりひめ』(どちらも福音館書店)もつづけて拝見して、お手紙をさしあげました。いま思えば、けっこう分厚い手紙を送ってしまったなと……。

牡丹:ラブレターをいただいて、ちょっとどきどきしました(笑)。すごい熱い気持ちを手紙にしたためてくださっていて。お仕事するときに、相手の方と自分が、細かいところまでしゃべらなくても「そうやんなー!」っていう気持ちの一致をどこでとれるか、っていうのが僕にとってはすごくだいじで。

──それからしばらくは、個展にうかがったり、本が出たときに感想をお伝えしたりでした。2019年の秋に、『リスのたんじょうび』を翻訳してくださった野坂悦子さんのお誘いでオランダの大使館のイベントにいったときに、ひさしぶりにお会いして。「なんかいまできそう!」っておっしゃっていただいたんですよね。

牡丹:そうでしたね。野坂さんとは『ようこそロイドホテルへ』という絵本をいっしょに作ったんですけど、つながるなあと。

──最初のうちあわせで「季節とか月をテーマにして描いてみませんか」という話をしました。それで、1〜12の番号のついた、ふしぎなホテルで起こる群像劇というのを考えてくださって。ラフのやりとりをしていたんですけど、何度かめのやりとりのときに、「じつはもうひとつ考えたんですけど」といって出してくださったのが、『めいわくなボール』でした。

牡丹:提案してくださった話も考えていたんですけど、絵本のページのなかにドラマをすべて収めるのがむずかしいな、窮屈だなと思っていました。そんなときに、ボールが頭のなかに飛んできて……「いいかも!」と思って、ラフを描いて見せました。
もともと変なホテルのイメージが残っているところにボールが飛んできたので、今回の絵本の舞台につながったところがあります。

──最初にいただいたラフがこちらでした。

実はこの絵本、最初にいただいたときからすごい完成してて、あんまりそこから大きく変えていないんです。絵本1冊作るまでに、何度も何度もラフをやりとりするのはよくあることなんですけど、『めいわくなボール』は最初から一本筋が通っていた。

牡丹:このときはイメージがすすすっと出てきたので、あんまりいじったりせず、そのイメージのまま描いた、という感じでした。

ただ、どうしても文章を書くときに関西弁が入ってしまうので、僕は正しい日本語だと思って書いてても「それ標準語じゃないですね」って(笑)。
あとは、どのくらい漢字を使うかとか、句読点やスペースをどうするか、というのは気をつけました。どこで区切るかというのは重要な問題で、お母さんが子供に読んであげるときにも、いい間合いで読んでもらいたいとか、考えることはたくさんあったりして。
今回見てもらいながら修正していただいたのがすごくよくて。とくにケンカもせずにすみましたね。

──よかったです(笑)。作画についてうかがうなかで、最初に出た線を大事にしている、というお話もされていました。

牡丹:僕は清書するまえに、A4ぐらいの紙にラフを鉛筆で描くんですけど。そのしゃらしゃらって描いているときは、「印をつけていく」ような感じで描いていて、そのときに出る線っていうのはすごく自然な線で。自分をよく見せようとか、うまく描こうとしてない線ってすごくシンプルないいバランスがとれているんです。きちんと描こうとすると、硬かったり、ギスギスした感じになってしまって、絵本の絵にはむかない絵になっていくことが多い。
なので、絵本を描くときは、なるべく肩に力が入らない、最初に描いた適当な鉛筆の線をそのまま使うぐらいの感じっていうのをすごく大事にしています。

今回の絵本には、登場人物があまり前に出てこないかわりに、モノをていねいに描くというのも意識しました。
たとえばお父さんの部屋だったら、お父さんが好きなものがきっとあるはずで、好きな小物だったり本だったり、部屋のしつらえを見ているだけで、お父さんがどんな人かわかるように。キッチンを見てたらきっとお母さんってこういう性格なんだろうなーとか。

──たしかに、絵の端々にそれぞれのキャラクターがあらわれていますよね。本を見ながら、ぜひ想像してみていただきたいです。

今回の絵本は、どんな画材で描かれているんですか。

牡丹:鉛筆と、水彩と、油絵の具を使っています。

たぶん実際の原画を見てもらうとわかりやすいと思うんですけど。水彩絵の具は紙の表面にとどまるものですが、油絵の具は紙のなかに染み込んでいくので、布を染めていくような感じで色がつくんです。なので、ひとつの紙の表面で、表面にのっている色と、染み込んだ色を使い分けることができる。そうすることで、濃淡とか奥行きを調整したりしています。

──それぞれでレイヤーがちがうってことなんですね。

牡丹:そうそう。ちょっとマニアックな話をすると、絵の具って結局色のつぶを画面にくっつけているんですけど、つぶが落ちちゃわないように、水彩絵の具の場合は、アラビアガムっていう樹脂でくっつけている。日本画の場合は、膠(にかわ)でくっつける。油絵の具は油を使ってつけるっていうちがいがあるんです。色のつぶ自体は、水彩でも日本画でも油絵でもみんな同じですが、くっつける素材がちがう。

日本画の場合だと、石をすりつぶして絵の具を調合するんですが、同じ石でも、細かく細かくしていくといっぱい反射するから白っぽい色になります。たとえば緑色だったら、同じ石でも粒がちっちゃくなるとうすい緑になる。そういうものを使い分けていくんです。

油絵の具の場合は、色のつぶを油で画面にとどめておくので……油ってちょっとテカテカしてるじゃないですか。そのつぶの表面に油がくっついたままになるので、発色がよくなる。それに、油は紙のなかにどんどん染み込んでいくので、色のつぶが紙の繊維のなかに入っていって、染色したみたいになるんです。

──最後の場面について、お話しておきたいんですが……この2場面、じつはまるまる描きなおしてくださっているんですよね。

Before

After

最初の流れだと、左の木が基準になって、ふたつの場面がコマわりのように、直線的につながる表現だったんですけど、描きなおされたほうでは、すこし場面のあいだに余白があるというか、浮遊感みたいなものも強く感じるようになっていて。

牡丹:
今回の『めいわくなボール』をつくるときに、どんどんボールがはねていって、クライマックスのまえに無音ですこし「タメ」があって、それからまた動き出す、というようなイメージがありました。
ラフのとおりに絵を描いてみたとき、読んでいる人が物語の外に追いやられてしまうような感覚があったんです。
ものごとを説明するときって、客観的に説明したほうがより正確に説明しやすいんですけど、そうすると、物語から引き離されてしまう。そこがちょっと僕は不満で。読んでいるひとが物語のなかにいるままで、クライマックスまで引き込めないかなと思って、描き変えました。

──木の色づかいもかなり変わっていますね。

牡丹:
木の描写をうすくすることで、現実的には手前にあるものなんですけど、そう感じさせないように。むしろ、手前の木よりも向こう側のボールが動いている世界に読み手が立ったまま、「なにかが起こるぞ」っていう予感を感じてもらって、最後には「ばーん!」って弾ける感じを出したいと思って、こっちのほうにしました。

──これはすごい発見でした。ふたつの場面が変わったことで、全体がうまく調和して、最後の盛り上がりもすごく映えたと思ったんです。文章は変わらなくても、絵の見せ方ひとつで印象ががらりと変わる。絵本っておもしろいなー、とあらためて思いました。

やさしいタオルpresents TOKYO⇄KYOTO 牡丹靖佳 〜 ウォールペーパー 

会期:10月13日(水)〜10月20日(水)
会場:TOBICHI東京
住所:東京都千代田区神田錦町3-18 ほぼ日神田ビル1F
関連サイト:https://www.1101.com/tobichi/tokyo/exhibition/detail/?p=8819
お問い合わせ:TEL 03-5422-3805

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