ホントのこといっちゃおうか! 2000人の子どものいいぶん
「ホントのこといっちゃおうか!」編集委員会
1984年(昭和59年)刊行
偕成社は、今年創業83周年。
このあいだに、数多くの本が刊行されてきた。
そのなかには、時代を反映しながらも、いまとなっては、
すでに忘却のかなたとなった出版物も数多くある。
ここでは、そんな過去の作品から、「知られざる一品」を紹介していこう。
今回紹介する本の表紙は、かの赤塚不二夫先生が描いており、「子どもに読ませたい!」という担当編集者の熱意が感じられる。
本の帯には、こう書かれている。
「学校のここがきらい! いま、なやんでいること ぼくとわたしのじまん話 おとなにいいたい……など、子どもたちの率直ないいぶんを、学校や塾・児童館などで子どもたちと本当の信頼関係をむすんでいるおとなが、もちよりました」
集まった子どもの本音が2000、その中から160の作文をセレクトしている。
ここに出てくる子どもたちの多くは、いま、40代、人生どまんなか。
では、大人になった彼らを想像しつつ、いくつか紹介していこう。
小学3年生の男の子が「なやんでいること」。
さいきん、やすひこくんが、ぼくのきゅうしょくをつまみぐいします。あと、トマトのしるみたいなやつをゆびにつけてなめたりします。ぼくが、「なんだよう。」というとやすひこくんが、「まあいいじゃないか。」というときがある。
「まあ、いいじゃないか」
大人になったやすひこくんが、会社でそういっているすがたが思いうかぶ。
次は、小学5年生の男の子のじまん話。
プールのある日、朝、うんこにいっても手はあらわない。プールでおよぐから、手をあらわなくてもへい気なんだ。もう一つのじまんはしゅく題をやったことが一度もない。しゅく題をやると時間がかかるけど、立たされるのはすこししか時間がかかんないからだ。
彼の合理性は40代になったいまも健在だろうか。おそらく、風呂に入る日は、手を洗わないだろう。残業はいっさいしない。だが、待ち合わせ場所には長い時間立っていそうである。
そして、小学2年生の男の子は、友だちについてこう書いている。
しゅうじの時、ゆうちゃんは、よくふざける。たとえば、ペンギンになって、「南きょくへ行ってきます。」といってへやの外へ出てしまう。そしてしばらくたつと、元気よく「ただいま。」と帰ってくる。ぼくたちが、「どこに行ってきたの。」ときくと、「南きょくに行ってきたの。」という。そしてしゅうじの先生におこられる。そんなゆうちゃんが一番いい。
南極はさむい。先生に怒られたのは、手がかじかんで、習字どころではなかったのだろう。
大人になったゆうちゃんは、昭和基地で働いているだろうか。いや、こじんまりと営業の仕事などしているかもしれない。「行ってきます」訪問先のホワイトボードには、「難局」と書いてある。すぐに元気よく帰ってきて、上司におこられる……。
そんなゆうちゃんが一番いい。
いまもむかしも、子どもの作文は、「本音」だからおもしろい。