icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

偕成社文庫100本ノック

第21回(プレイバック中!)

海賊島探検株式会社

『海賊島探検株式会社』古田足日 作

「ぼくはおとなだ。」
 この本は、そんな一言から始まる冒険好きな子どもたちの物語である。

 なにしろテンポがいい。木の枝の上に秘密基地を作って遊んでいると、遠くの海に無人島が見える。当然行ってみようぜって話で盛り上がるが、ボートを借りるにもお金が無い。そこで彼らが思いついた方法は、大人に頼る訳でも、アルバイトに精を出す訳でもなく、なんと友達のお小遣いの中から出資を募って「株券」を発行するという大胆かつ破天荒なアイデアだった。株券だから配当もある。それは島で見つけたお宝の山分けである(子どもたちにとっては、石だって貝殻だって何だって宝物なのだ)。
 教育ママの妨害にあったり、ニセ・カストロという渾名の子が得意のアジテーションで奮戦したりと実に軽妙なテンポで話は展開していく。お堅いと思っていた代議士のおじさんが昔わんぱく坊主だった頃、やっぱり船をこいで無人島に渡り大目玉を食らった話。みんなで計画を立てるため、図書館でそれまで見向きもしなかった島の古文書や歴史資料を片っ端から調べる場面。ひとつひとつの描写が実に生き生きとしている。
 そして仲間が増え、色々な人の協力を得て、子どもたちは遂に無人島上陸に成功する。鬱蒼としたジャングル、昔の海賊が隠れていたという洞穴。ところが無人島と思われていた島に突然、得体の知れぬ大人の影が見え隠れし始めるのだ。絶対的に足りない情報、都会とは違う自然環境が、少しずつ子どもたちの団結力を蝕んでゆく。

 ……ここから先はネタバレになるので、是非ご自分でお読み頂きたい。

 扉の言葉はこう続く。
『心の中には、ちゃんとこどもがいる。いそがしいからわすれているだけなのだ。』
 うん、もうちょい踏ん張ってみるとするか。
 昔の俺に笑われないようにな。

(販売部 西川)

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

作者の、こういうお話があったら面白いな、こんなことあったらすてきだな、という気持ちが収められた、色とりどりのびんづめを眺めているような物語集でした。(30代)

pickup

new!新しい記事を読む