先日、貴婦人と一角獣というタペストリーの連作を見ました。貴婦人と一角獣というタイトルではあったのですが、どのタペストリーにもメインで描かれているのは貴婦人と一角獣…と、ライオン。ライオンと一角獣といえば紋章で並んでいるのもよく見ますが、わたしが最初にこのコンビに出会ったのは、アリスの鏡の国ででした。
鏡の国でアリスが出会うのはチェスの駒たち(や、それになぞらえたマザーグースの登場キャラクターたち)。イギリスでは有名なチェスもマザーグースもよく知らない異国の幼いわたしは、それでも話や彼ら自身やその元の詩や言い伝えに夢中になりました。マザーグースはただの詩でもありますが、子どもたちが口ずさんだり手遊びをしたり、輪になって遊んだりするもので、日本で言えば、「かごめかごめ」や「おちゃらかほい」のようなものでしょうか、とにかく声に出して読むとしっくりくる文章なのです。アリスの話は、そのあらすじだけを楽しむのではなくて、元の詩やそれをもじったキャロルの言葉遊びを思いきり楽しめるのが魅力でもあるのです。今から読む人にもこれまで読んだことのあるにも、ぜひ声に出して読んでもらいたいと思います。
また、ルイスキャロルはアリス二作で著名な作家ですが、本業は数学の先生でした。アリスの話がところどろが妙に理屈っぽかったり現実的だったりするのも、それを聞くと納得します。そして偕成社文庫の訳者、芹生一さんも理系の研究者(工学博士!)。
わたしが日本で沢山出ているアリスの本の中でも偕成社文庫版をおすすめするのは、この、隅々まで忠実で原書の雰囲気そのままの翻訳、巻末の詳しい註(小学生のわたしはこれも夢中になって読んだものです)、そしてキャロルのこだわりテニエルの挿絵、これらがすべて楽しめるからです。
皆さんも鏡の国、あと前作であるトランプのふしぎの国で、いろんな登場人物たちに出会ってみてください!
(販売部 高橋)