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偕成社文庫100本ノック

第10回(プレイバック中!)

シュレミールと小さな潜水艦

『シュレミールと小さな潜水艦』斉藤 洋/作

 シュレミールは、白ねこです。そんなに、わかくありません。港町の酒場で、船乗りにイワシをもらったり、たまにはカニをもらったりして、気楽に暮らしています。でも、近ごろ町は、すこし変わりました。戦争がはじまったのです。

 そんなある日、シュレミールは、桟橋で半分しずんだクジラのような船を見つけます。好奇心からその船にとびうつってみると、船は沖にむかって進みはじめてしまいます。しかも、どんどんしずみます。あやうしシュレミール!

 間一髪、なぞの声にみちびかれて、シュレミールは船のなかに逃げこみますが、なかには、だれもいません。じつは、声の正体は、船自体。
 シュレミールが乗りこんだのは海軍攻撃型小型潜水艦U-5114アルムフロッサー、通称アルムでした。電子頭脳を搭載し、動物のことばをしゃべり、自分でものを考える最新鋭の潜水艦です。
 アルムは、戦闘中のできごとによって「ものを思う」ようになり、ある目的のために海軍から逃げだしたのです。

 こうして、シュレミールはアルムとともに、戦争の原因となった島へむかうことになります。

 シュレミールとアルムの軽妙なやりとり、移動用のカメ型、掃除用のカタツムリ型などふしぎなロボット、アルムを追いかける海軍司令部をはじめとする、戦争をする人間のおろかしさ、こっけいさなど、読みどころがたくさんある作品ですが、わたしがいちばんすきなのは、シュレミールがアルムをたしなめるシーンだったりします。
 自分を犠牲にして戦争を終わらせようとするアルムにたいし、シュレミールはこんなふうに話します。

「〜生きのころうと思っていれば、生きのこれるかもしれないじゃないか。(中略)それをはじめっから死ぬ気でいたんじゃ、チャンスがあっても生きのこれない。おれは戦争のことはよくわからない。でも、こいつは戦争じゃなくたって同じことだ。平和なときでもいっしょだぜ。」(本文より)

 シュレミールのような含蓄のあるおとなになりたいものですね。
 ねこと、潜水艦と、海がすきなひとは、ぜひ読んでみてください。

(編集部 佐川)

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今日の1さつ

毎日をまじめにコツコツ生きるトガリネズミを見ていたら、自分の日常ももしかしてこんなに静かな幸せにあふれているのかも、と思えました。海に憧れて拾ったポスターを貼ってみたり、お気に入りのパン屋さんで同じパンを買ったり。駅中の雑踏やカフェでふとトガリネズミを見かけそうな気がします。(40代)

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