「魔法」「魔法学校」「魔法使い」。
これらが出てくるファンタジーをこれまでいくつも読んできましたが、やはりいくつになっても憧れてしまう、魔法の力!
『クラバート』も魔法学校で愉快に魔法を学ぶ少年のお話、かと思いきやの、これはちょっと異色のファンタジー。表紙の、人間の頭をもったカラス(これが、主人公のクラバート)も、なんともいえない不思議な表情でこちらをじーっとみつめています。
主人公の少年クラバートは、夢できいた声に導かれ、水車場で見習いとして働きはじめます。
水車場では、厳しい親方の監視のもとで、同じく11人の職人たちが働いていましたが、彼らは週に一度、カラスに姿を変え、親方から魔法の呪文を教わる弟子たちでもあるのでした! 他の職人たちともに親方から魔法を学びはじめたクラバートは、好奇心から努力を重ね、ぐんぐん魔法の力をつけていきます。
……と、一見わくわくするようなお話なのですが、実は、ここまでずうっとこの物語にはなにか、不穏な空気が漂っています。魔法を学ぶ喜びに心を躍らせたいのに、なんだか後ろ髪を引かれるような、暗示的な描写が、そこここに、あるのです。
その正体を端々から探りながらも、魔法の魅力にクラバートと共に感嘆したり、緊迫のシーンに身体をこわばらせたり……読みはじめたら、どっぷりとその世界に浸ってしまいます。
ドイツに伝わる伝説を元に、プロイスラーが描き上げた長編のファンタジー。
あの宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』にも影響を与えたといわれている作品です!
(販売部 宮沢)