みなさんは、本屋の児童書売り場で何気なく手にとった本を立ち読みしているうちに感動して泣けてきて、 恥ずかしくなって帰ったことはありますか。
わたしにはあります。小学生の頃読んだことはあったはずなのに思った以上に引き込まれてしまって、結局別の日にもう一度その本を買いに行きました。これがその本『クオレ―愛の学校』です。
タイトルから内容が全く推測できない話なのですが、これはエンリーコというイタリアの10歳ぐらいの少年の日常の物語です。1ヶ月に彼の日記が10個前後、それに学校で習う物語(「毎月のお話」)が1つ、といった構成でエンリーコの1年が描かれています。短い話の集まりなので、朝読にもおすすめします。「毎月のお話」が全て感動的な話なので『フィレンツェの少年筆耕』や『サルデーニャの少年鼓手』あたりを朝に読んでしまうとちょっと一時間目の授業に集中できないかもしれませんが・・・(『サルデーニャの少年鼓手』の最後の大尉のセリフは忘れられないです)。あとアニメで有名な『母を訪ねて三千里』も、この「毎月のお話」の一つなんですよ。
また、日記に出てくるエンリーコの同級生たちが個性豊かです。頭も性格も良い金髪巻き毛の優等生や、あまり社交的ではないけど真面目な努力家や、周りより少し大人びていて正義感の強い頼りになる子、などなど。エンリーコの人間観察眼が素晴らしいので、見かけから喋り方まで、実際に彼らを知っている気分になれます。同じ本を読んだ友達同士で、誰が好き?なんて話をするのもこういった登場人物の多い物語の醍醐味ですよね。
最後に歴史の勉強を兼ねて少しだけ。この物語は、それまで色々な州に分かれていた人たちが「イタリア」という一つの国として独立したばかりの時期に書かれたので、国を愛そう、という意識が高くて話がかなりお説教ぽかったり「イタリア万歳!」というメッセージ性が強かったりします。でもわたしは最初に読んだときそこの部分は気にしないで純粋に話を楽しみましたし、歴史を知ってから読むと逆に「なるほど!」と思えました。その物語が書かれた国や文化、作者の背景などを知ってから読むのも、読書の楽しみ方の一つかもしれませんね。
(販売部 高橋)