「アイちゃんのいる教室」は高倉正樹さんが、ダウン症のアイちゃんのいる小学校のクラスを1年生のときから6年間取材して、3冊の写真絵本にまとめたシリーズです。
元々は読売新聞宮城県版に連載した記事で、高倉さんは現役の新聞記者さん。書店でお客様との距離が近い状態でお話をする経験はあまりなく、緊張されていたそうでしたが、そんなことを感じさせず、アイちゃんのクラスと過ごした6年を絵本より詳しく、写真と一緒に振り返ってくださいました。
多いときは毎週のように取材を行い、6年を通じて自称「37人目のクラスメイト」となり、1泊2日の野外活動や卒業式の担任の先生へのサプライズにまで加わっていたという高倉さん。親でも先生でもない立場で子どもたちを見つめてきた立場ならではのお話は、とても臨場感がありました。
最初はこんなに長いお付き合いになるとは思わず、「まずダウン症の人に会ってみよう」という目的でアイちゃんの遠足に同行した高倉さんでしたが、1日でアイちゃんの魅力に惹かれ、クラスを取材して連載記事にすることになりました。
記事にする際には、実名で書くことと、写真は後ろ姿ではなく顔を正面から撮って載せることの2つにこだわって、読んだ人に「実際に存在するクラスだ」と伝えられるようにした、とのこと。そして連載記事を本にまとめるときには、アイちゃんと同年代の子に伝えられるように分かりやすい文章で書くこと、そして「ダウン症」「障がい」という言葉を本文に使わないこと、を心掛けたそうです。
1冊目を出したときは、「アイちゃん自身がダウン症の中でも特別な子だから、すばらしいクラスになったんだね」という声をもらった。べつにアイちゃんが特別な存在だから取り上げたわけじゃないんだけど…という思いがあって、2冊目ではクラス全体の様子を多く描いた。そしたら今度は「先生が特別に熱心でいい先生だから」という感想をたくさんもらった。そこで3冊目は、アイちゃん以外の子も全員主人公、という気持ちでつくった。1冊目の『アイちゃんのいる教室』から6年かかって、「アイちゃん”も”いる教室」になった、とお話ししていらしたのが印象的でした。確かに3冊目では、色々な子どもたちの声や様子が描かれていて、自分の小学生の時って、こんな素直に、でも大人がドキっとするようなことを話していたかしら、と考えさせられました。
こうして講演を振り返っていても伝えたいこと、書きたいことが止まらないのですが、是非、実際に「アイちゃんのいる教室」シリーズを読んでもらいたいです。「誰もが生きやすい社会」というのがどういうものなのか、というのは考える人や知る人が増えれば増えるだけ、良い方に変わるはずなので、1人でも多くの人が考えるきっかけに、このシリーズがなってくれればいいな、と思いました。
(販売部 高橋)
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