7月1日(土)、代官山 蔦屋書店にて、翻訳家・木村有子さんとチェコセンター長・高嶺エヴァさんが、チェコの子どもの本の魅力について語る、トークショーが開かれました。
木村さんは、チェコの絵本『どうぶつたちがねむるとき』(偕成社)と、童話集『こいぬとこねこのおかしな話』(岩波少年文庫)の翻訳を終えたばかり。2つの本の刊行に加え、今年は日本とチェコの国交回復60周年、日本におけるチェコ文化年という記念すべき年とのことで、今回のイベントが企画されました。
チェコを愛するおふたりの話はとまらない!
木村さんは小学生時代の2年間、お父様のお仕事の関係でチェコにお住まいになっていたそうです。当時の日本人としてはめずらしく、現地校に通っていたという木村さん。チェコ人との交流も多く、チェコの子どもの本の魅力にすっかりとりつかれたのだとか。その経験から、長年絵本の翻訳家を夢見て、15年前に『もぐらくんおはよう』(偕成社)で翻訳家デビューをされました。以来、数々のチェコ絵本を日本に紹介されています。
一方のエヴァ高嶺さんは、チェコで生まれ、育った生粋のチェコ人。「ヨーガンレール」の広報担当や、音楽活動、翻訳家、通訳などさまざまなお仕事をご経験され、現在東京のチェコセンター長をつとめられている、いくつものお顔をもった方です。(もちろん日本語もご堪能!)
トークでは貴重なチェコ絵本の原書も多数紹介され、思い出の宝箱をあけるように、幼少期の読書体験にすっとかえっていかれるおふたりの、幸せそうな表情が印象的でした。木村さんの新訳で出版された『こいぬとこねこのおかしな話』(ヨゼフ・チャペック作/岩波少年文庫)は、チェコで100年前に刊行されたもので、エヴァさん自身もバイブルのように愛し、今でも隅々の絵までおぼえているのだそうです。このように国民的に愛されている本が多数ある一方で、最近のチェコでは新しい試みの児童書の出版もさかんで、『どうぶつたちがねむるとき』は、新進気鋭の児童書出版社バオバブ社から刊行されたものということ。
お話は自然と、チェコのお国柄にもおよび、チェコ人はきのこ狩りが大好きで「一家に1冊はきのこ図鑑がある」(!)というめずらしいエピソードも登場しました。(チェコ好きの方には常識なのかもしれないのですが…!)
木村有子さんは、今でこそチェコ絵本の翻訳家として著名ですが、それを支えているのは、たった2年間の、幼少期にチェコで過ごした時間なのですよね。そのとき心に芽生えた思いを大事に育て、何十年もののちに開花されたことに、こだわりを持ちつづけることの大切さを教えてもらったような気がします。純粋に子どもとしてチェコの本に親しまれた木村さんが、日本に紹介してくださる子どもの本、これからも楽しみにしたいですね。
途中、荒木たくみさん(山の木文庫)の素話の披露などもあり、観客のみなさんもきっと童心にかえりながら、トークショーを楽しまれたのではないかと思います。
新刊『どうぶつたちがねむるとき』
今回偕成社から刊行した『どうぶつたちがねむるとき』(イジー・ドヴォジャーク 作/マリエ・シュトゥンプフォヴァー 絵/木村有子 訳)は、ラッコ、アザラシ、フラミンゴ、ネコ、キリン…などなど、動物たちのさまざまな眠り方を、美しい絵とともに描いた絵本です。
たとえば、ラッコは長いコンブをからだに巻きつけて眠り、アザラシは深く海にもぐって眠ります。他の動物たちはいったいどんなふうに眠るのでしょう? おやすみまえの読み聞かせにぴったりで、通しで読まずとも、好きなときに好きなページを開いて楽しめます。
売り場にはチェコ絵本&グッズがずらり!
現在、蔦屋書店の児童書売り場には、チェコ絵本とグッズのコーナーが展開中! 好評につき、会期を延長し、7月中旬まで開催するそうです(詳細は代官山 蔦屋書店まで)、こんなにチェコ関連の本が並ぶこともめったにありません。チェコ好きの方必見ですよ!
(販売部 宮沢)