こんにちは! 編集部の刑部(おさかべ)です。
11月の新刊の再校戻し作業、来春の学校図書館ものの編集作業で、ヒイヒイ言っているこのごろですが、先日、がっくりつかれて自宅にたどり着くと、玄関先の暗がりで、2つのつぶらな瞳が僕を迎えてくれました。
お、カマキリ! しかも、この子は、先週末、庭でバイクのタイヤに空気を入れているときに、どこかから飛んできて僕のズボンに着地し、なぜかそのままズンズン服を伝って上り、胸のあたりまで来て、僕の顔をじっと見ていたのと同じ子だ……3日間ぐらい、ずっと庭にいたの?……十数年前に亡くなった僕の父親かな?な〜んて、ちょっと思ってしまいました。そういえば最近、お墓参りに行ってないからな……
秋の訪れを、僕は毎年楽しみにしています。なぜなら秋は、カマキリの成虫がよく見られる季節だからです。
カマキリは僕の大好きな虫。いちばん好きと言ってもいいかも。なぜならば、と考えてみると、さすが肉食の昆虫だけあって、動作が機敏でよく動き、また目がいいので、自在に動く顔できょろきょろとあたりを見回す風情が、妙に人間っぽく、なんともカワイくて、親しみが持てるからですね。きっと。
さて、カマキリにもいくつか種類がありますよ。
日本には、オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリ、ウスバカマキリ、コカマキリ、ヒナカマキリ、ヒメカマキリの7種がいますが、身近にもっともよく見かけるのは、オオカマキリと、ハラビロカマキリの2種です。
今回は、この2種類のカマキリの見分け方を伝授いたしましょう。
さっきの玄関先にいたのは、オオカマキリです。オオカマキリには、全身が緑色の「緑色型」と、褐色が入る「褐色型」がいますが、これは褐色型ですね。そして、おそらくオスです。カマキリはどの種類も、オスはメスにくらべて体が細くて小柄、そして触角が長めなので、区別が付きます。下は別角度の写真。
ね、けっこう触角が長いでしょう。で、ハラビロカマキリはこちら。
僕が通勤途中、手に乗せて、戯れている写真です。
ご覧のとおり、ハラビロカマキリは、オオカマキリにくらべて、寸詰まった体形をしているのがわかるでしょう。そして、写真はメスなので、おなかがぷっくりしていて、まさに「ハラビロ(腹広)」といった感じですが、オスはもっとスマートで小柄な印象です。
また、ハラビロカマキリの特徴としては、オス・メスともに、写真のように背中(羽)の中央あたりに白っぽい点が左右にあるので、おぼえておいてください。なお、オオカマキリ同様に緑色型・褐色型がいますが、ハラビロカマキリには褐色型は少ないといわれています。
あと、写真で気づいた方もいるかもしれませんが、このハラビロちゃん、右目が変色していますね。もしかしたら、見えていないのかもしれません。
さあ、以上のように、オオカマキリと、ハラビロカマキリの成虫は、けっこう見た目がちがって、見分け方もお分かりになったと思いますが、それぞれの幼虫はどんな感じでしょう?
「幼虫のころは、どちらも同じような見た目で、区別がつきにくいんじゃないの?」なーんて思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな方に朗報です! 幼虫のほうが、見分け方がもっとカンタンなのです。つぎの写真を見てください。上がオオカマキリの幼虫、下がハラビロカマキリの幼虫です。
どこがちがうか、わかりましたか?
「なーんだ、案の定、分かんないじゃん。どこらへんがカンタンなの? 成虫は分かりやすかったけど、これを野外で見ても、区別はつかないよなあ!」というなかれ。
よく見てください。オオカマキリの幼虫が、おなかをふつうにまっすぐにしているのに対して、ハラビロカマキリの幼虫は、おなかをぐっと上に曲げていますね。そう、これは、たまたまでもなく、幼虫のおなかが痛かったわけでもなく……ハラビロカマキリの幼虫は、おなかをぐっと曲げているのが「デフォルト」なんです。
ほら、もうみなさんも、オオカマキリの幼虫と、ハラビロカマキリの幼虫を、区別できるようになりました。来年の5月ぐらい、どこかでカマキリの幼虫を見かけたら、このことを思いだして、区別してみてくださいね。
さいごは、オオカマキリと、ハラビロカマキリ、それぞれの卵のちがい、です。成虫はあんまり見たことがないね、という方も、卵はどこかで見たことがあるのではないでしょうか。それぞれの写真はこちら。
上がオオカマキリ、下がハラビロカマキリです。
大きさは、どちらも長辺が2センチほど。正確には、卵ではなく「卵嚢(らんのう)」といいます。1個の卵嚢の中には、たくさんの卵が入っています。なんと、100〜300個もの卵が入っているそうですよ。
オオカマキリの卵嚢と、ハラビロカマキリの卵嚢では、形の印象がぜんぜんちがうでしょう。ご覧になってお分かりのように、オオカマキリのは大ぶりで、少し下が広がった釣り鐘のような形をしているのに対して、ハラビロカマキリのはすこし小ぶりで、「おいなりさん」のような形をしています。
それにしても、です。カマキリの卵嚢って、なんでこんな形をしているんだと思いますか? カマキリのメスは、これをまるごとポコッとおしりの穴から産むわけでなく、ある方法で産むことでこのような形に……
それはまた「僕の大好きなカマキリ 〜その2 産卵激撮〜」で大公開しますので、どうぞお楽しみに。
僕の担当編集の本でも、もちろんカマキリが出てくる本がありますよ。
・虫の飼いかた・観察のしかた④ 近所の虫の飼いかた(2)〜スズムシ・バッタ・カマキリほか〜
・生きもの つかまえたらどうする?
の2冊です。
前者は、僕の昆虫の師匠・昆虫写真家の海野和男さんと、現在、群馬県立ぐんま昆虫の森に勤務されている筒井学さん、海野さんの助手を経て独立された高嶋清明さんが共著でつくった本で、昆虫の見つけ方や飼い方から、産卵のさせ方、幼虫の飼育から羽化のさせ方まで、とてもくわしく載っている6巻シリーズの1冊です。
後者は、神奈川県の相模原市立博物館の学芸員をされている秋山幸也さんと、「生きものカメラマン」の松橋利光さん、絵本作家のこばようこさんの3人がつくった本で、庭、近所の空き地、池のそばなど、身近な場所で見つかる虫やトカゲ、カエルなどの飼いかた、観察のポイントなどが、ひと目でわかる本です。
よければ、読んでみてくださいね。では、またお会いしましょう!
(編集部 刑部 聖)