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偕成社文庫100本ノック

第82回(プレイバック中!)

杜子春・くもの糸

『杜子春・くもの糸』芥川龍之介 作

 短編作家・芥川龍之介には『羅生門』をはじめ有名な作品がたくさんありますが、偕成社文庫『杜子春・くもの糸』では、その魅力を存分に味わうことができる名作12編を収録しています。
 特に、表題作『くもの糸』については小学生くらいでお話を聞いた覚えのある方も多いのではないでしょうか。私も小学生の頃に当時の担任の先生に紹介され(たのか教科書に掲載されていたのか…)、確か『くもの糸』の内容を学校で聞いて「カンダタのようになってはいけません」「自分のことばかり考えていてはダメですよ」と教わった気がします。それまで、絵本『じごくのそうべえ』(童心社刊)により「地獄に落ちてもオニどもを困らせて暴れまわり、エンマ大王をギャフンと言わせれば生き返ることができる!」と軽く考えていた私は、担任の先生による『くもの糸』の朗読と先生の恐ろしい地獄観を刷り込まれて、悪いことをして地獄に落ちることは避けねば…と心に誓ったものです。

 さて、著者の芥川龍之介のことについても少し触れます。
 明治25年(1892年)に現在の東京都中央区で生まれた龍之介は、生後すぐに母の実家・芥川家の養子となり、養父母の江戸趣味に影響を受けて育ちます。ちなみに龍之介の「龍」の字は、彼が辰年辰月辰の刻に生まれたことに由来するそうです。(芥川ファンの間では有名なことかもしれませんが、豆知識ですね)
 本好きだった龍之介はやがて仲間と雑誌を発行するようになり、その後たくさんの作品を生み出していきます。残念ながら、昭和2年(1927年)に自殺を図り36歳の若さで亡くなるのですが、死後90年ほど経つ現代でも著名な作家の1人として必ず名前が挙がりますし、これからもその作品が読み継がれていくのだと思います。

 芥川龍之介の作品には、平安時代や江戸時代、昔の中国を舞台とするような歴史ものがいくつも出ているのですが、偕成社文庫に収録されている『杜子春』や『鼻』のように教訓めいた作風のものは教育現場で題材に使われることも多いようです。実は某学習塾様が偕成社文庫『杜子春・くもの糸』を独自の夏休み課題図書にしたこともあります。

 今年の夏は「ポケモンGO」が大流行ですけど、読書もいいですよ。芥川龍之介の有名作品は教養としても、読んでおくことをオススメします。夏休みの間にぜひどうぞ。

(販売部 柴原)

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今日の1さつ

真っ黒な表紙にこれ以上ない直截な言葉「なぜ戦争はよくないか」の表題にひかれ、手にとりました。ページを繰ると、あたたかな色彩で日常のなんでもない幸せな生活が描かれていて胸もホッコリ。それが理不尽な「戦争」によって、次々と破壊されていく様が、現在のガザやイスラエルと重なります。(70代)

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