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偕成社文庫100本ノック

第67回

銀河鉄道の夜

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 作

 古代の人々が星をみて神話を語り、名付けて来た数々の星座。星座は星空観察にはかかせない指標ですが、
 一方で、地上から遠くに目をこらし観察することしかできないものです。むしろ光の粒ですから、宇宙飛行に出て実際にその中に入ってしまったら分からなくなってしまいますし、決して近づくことはできない、永遠のあこがれのような遠い存在です。

 でも、物語の力を借りたらどうでしょうか?
 今日ご紹介する、宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」は、賢治のゆたかな想像力、万物に心を寄せて会話ができるという才能を借り、地上から眺めていた星たちの世界に、そのままひゅうっと身体ごととびこめる、物語ならではの楽しみを与えてくれる作品です。

「銀河鉄道の夜」は、孤独な少年ジョバンニの夢物語として描かれます。
 星空を眺めていたジョバンニはふと気づくと、大好きな友人カンパネルラと、星々のあいだを走る銀河鉄道に乗っていました。その世界がどのようなものか、みなさん想像できるでしょうか? ふだんみあげる夜空は、星があるにしてもぼんやりとした暗いところですが、ここでは、ありとあらゆる光があふれる、とびきり明るい空間として描かれます。その幻想的で美しいこと! 野原があり、町があり、列車のふもとにはリンドウが咲きみだれます。進行方向の目印は、あの、星座たちです。

 列車の窓にうつる景色や、途中の停車した駅での出来事……
 豊かな描写で描かれながらも、そのどれもが、とにかくとらえどころがない不思議さをもっていて、いつしか、自分もジョバンニの横に座り、前のめりに列車の外をみている気分になる、そんな力をもった物語です。
 読み進めるうちに、列車の旅が死後の世界とときおり重なることに気づきつつ、すべてを肯定してくれそうな優しい光につつまれた旅路に、それでもいいなという、あやうい恍惚な気持ちになります。
 けれども一方で、主人公ジョバンニの心には常に人間らしい悩みが移ろっていて、その影の部分が唯一、読者を現実へつなぎとめてくれるもの、引き戻してくれるものとしての作用をしてくれます。

 病床に臥した賢治が最後まで推敲を続けていたというこの作品は「未完成」と言われており、
 すこし唐突で不思議な終わりを迎えますが、だからこそ読者それぞれの想像をふくらませることもできる作品です。読む人の年齢や心境によって、何度読んでも味わいが異なると思うので、みなさんそれぞれの面白さをみつけてほしいなあ、と思います。
 幻想的な星空の列車の旅に、あなたもでかけてみませんか?

(販売部 宮沢)

*この本には、ほかに「狼森と笊森、盗森」「注文の多い料理店」「ツェねずみ」「カイロ団長」「洞熊学校を卒業した三人」「なめとこ山の熊」「雁の童子」が収録されています!

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今日の1さつ

うちのダンナさんが、珍しく「おもしろい!絵もすごい!」と声をあげていました。明日、現在勤めている園で初めて読み聞かせしてみようと思います。(28歳)

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