朝晩は肌寒く感じる日も多くなり、すっかり秋らしくなってきました。秋の夜長と言いますが、皆さんはどのように過ごされるのでしょうか。私は虫の鳴き声に耳を傾けながらゆっくりと星を眺めるのが好きです。そんなわけで今回は星がきれいに見えるこの時期におすすめしたい星が出てくるお話のご紹介です。
この本は4つのお話の入った短編集なのですが、「ぼくは星の出てくる話をしなければならなくなった。というのは、とつぜんあらわれたあいつが、「星の出てくる話をしておくれ。」と、いったからだ。」というまえがきで始まり、あとがきまで読むと全体で1つのストーリーになっているという少し変わった作りになっています。
4つのお話はそれぞれ、あいつがぼくに“リクエスト”した「ほんものでない星が出てくるほんとうの話」、「ほんものかどうかわからない星がでてくるほんとうかどうかわからない話」、「ほんものの星がでてくるほんとうとはおもえない話」そして、ぼくがあいつに話させた「あいつにいわせればほんものの星がでてくるほんとうの話」という設定になっています。
ここに出てくる“あいつ”とは夜な夜な“僕”のもとにやってくるドーフィーという奇妙な鳥です。鳥が話を聞かせてくれと言ってくるというのがなんとも岡田さんのファンタジーらしいですが、最後の解説で、教育評論家の斎藤次郎さんがドーフィーが何者かについて分析されており、それが「なるほど!」と思わせてくれる内容になっています。
私のお気に入りは2つ目の「箱のなかの星」というタイトルの「ほんものかどうかわからない星がでてくるほんとうかどうかわからない話」です。小学生の洋がある日学校帰りに白い石の入った黒い箱を手に入れます。その石は一見ただの石ころなのですが、箱の中を覗き込むと一面の星空が見えたのです。それ以来、洋は夢中で箱の中の星ばかり見るようになりますが、どうやらお父さんや高校生のにいさんにはただの石にしか見えないようです。それでもこのふしぎを誰かと分かち合いたい洋は、学校で友達に石を見せます。するとある子にはサッカーボールに見え、別の子は海に浮かぶ島が見えると言います。そう、この石はそれぞれの子の関心や夢を見せてくれる不思議な石だったのです。思わず当時の自分だったら何が見えたのだろう?と考えさせられました。
今年の秋は星の話を読みながら天体観測に興じてみてはいかがでしょうか?
(販売部 今村)