2021年10月26日、第31回Bunkamuraドゥマゴ文学賞(東急文化村主催)を受賞した、堀川理万子さんの絵本『海のアトリエ』の授賞式と、今年度の選考委員・江國香織さんとの記念対談が行われました。新型コロナウイルスの感染対策もあり、今回はYouTubeのライブで式典の様子が配信されました。そのようすをレポートします!
Bunkamuraドゥマゴ文学賞と『海のアトリエ』について
同賞は、パリの老舗カフェが主催する「ドゥマゴ賞」のユニークな精神を引き継ぎ、1990 年にBunkamuraが創設した文学賞。受賞作品は任期が1年の「ひとりの選考委員」によって選ばれます。今年度の選考委員は作家の江國香織さん。本賞を絵本が受賞するのは、これが初めてのことです!
絵本は、昭和30年代の神奈川県の海辺のアトリエを舞台に、堀川さんが子どもの頃に出会った初めての「子どもを子ども扱いしない」大人である近所の絵描きさんとの思い出から生まれました。
風通しがよく、誰もを受け入れてくれる絵本
授賞式では、江國香織さんが選評を、堀川理万子さんが授賞のよろこびをお話しされました。
江國香織さんは、この絵本について、「風通しがよく、誰もを受け入れてくれる絵本」と紹介されました。
たった1回ページをめくるだけで、50年〜60年の時の流れがあり、もし文章だけで書いたら、とても長い小説になるだろうと思うくらい、いろいろな時空間、感情や色がとじこめられている。本当は自分だけのものにしておきたいと思う絵本で、内緒にしたかったのに! という気持ちもあるが、多くの人が「自分だけのもの」と思ってこの絵本を読んで、この文学が浸透してくれたらいいなと語られました。
堀川理万子さんは、江國香織さんの選評の「絵本はもちろん文学である。文章がついているからではない。絵本においては、絵が言葉だからだ。」というコメントに触れ、絵本の絵を、「見る」をこえて「読む」ことをしてくださったことをありがたく思うとお話しされました。
社会に出て30年、賞というものをいただいたことはなく、とにかく自分の創作の仕事をなるべく長く続けていけることが一番だと思っていたが、この度映えある賞をいただけて、とてもうれしく大きな励ましをいただいたと語られました。
絵本にでてくるあのお料理の正体は?
おふたりの対談では、画家の堀川さんと、小説家の江國さんがそれぞれの立場からお互いの創作活動への尊敬の気持ちを持って言葉を交わされていたのがとても印象的でした。
また、『海のアトリエ』に出てくるお料理についても話が及びました。絵描きさんと女の子がお料理を前に乾杯するシーンで、テーブルに並ぶのは「ベーコンでプルーンを巻いて焼いた」もの。白ワインが際限なくいただけるお料理だそうです! 堀川さんはレシピ本で初めて知って、よく作られるのだとか。ぜひみなさんも試してみてくださいね。
ちなみに、江國香織さんが白ワインのお供におすすめするのは、イチジクの上に冷たいバターをのせたもの。『雪だるまの雪子ちゃん』の主人公の雪子ちゃんの大好物でもあるバターは、江國さんも大好きなのだそうです!(どちらもおしゃれなお料理ですね!)
まだ絵本を読んだことのない方はぜひ、書店でお手にとってみてくださいね。Bunkamura館内では『海のアトリエ』の原画展も開催中です。こちらもぜひ足をお運びください!
第31回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作『海のアトリエ』原画展
会期:2021年10月24日(日)~11月4日(木)
会場:Bunkamura館内3か所にて展示(1F-エントランスウォール・Wall Gallery・B1F-ブックショップ ナディッフモダン店内)
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
関連サイト:https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/topics/5321.html
お問い合わせ:TEL.03-3477-9111