「ジャングルにまぎれこんだ人間の男の子が、心やさしい動物たちにかこまれて、自然のおきてを学びつつわいわいすごす、楽しい毎日……」子どものころに読んだ記憶のみによる、わたしの『ジャングル・ブック』はこんな感じの物語でした。細身で全身がばねのような少年がジャングルのなかをとびはね、まわりでトラをはじめとする大型哺乳類や家族のオオカミがにこにこ見まもっている、という絵をいつも想像していました。しかし…! 今回読み返してみて、自分の認識の甘さに愕然としました。ジャングル厳しい…!(そもそもトラは仲間じゃなく天敵だった…!)
人間の子、モウグリはジャングルでオオカミの家族の一員となり、クマのバールー、黒ヒョウのバギーラなどにかわいがられ、すくすくと成長するのですが、なにかと「人間のくせに!」という感じでののしられたりうとまれたりします。ほかの動物たちに狙われ、命があぶない場面も多々あります。一方、人間の村では「人間の子」として受け入れられるかと思いきや、そんな単純な話でもない。白でも黒でもない、グレーな部分がひろがります。なんというか、このあたり今の世界の状況にも置き換えられるようなテーマをはらんでいます。自分は果たしてどちら側なのか、どちら側などという考えがまずどうなのか。読んでいる自分が試されるような気がしました。
と、深読みするとどんどん深読みできるのですが、厳しいジャングルの生活を、自信たっぷりに、賢さを発揮して、力強く生きぬくモウグリの姿は文句なしにかっこいいのです。どきどきわくわく、読みはじめたら止まらない一冊です。
この本、イギリスに統治されていたころのインドが舞台です。ぽつぽつと描かれる当時のインドの社会状況もなかなか興味深いものがあります。そちら方向で楽しみたい方には、おなじキップリングの『少年キム』もおすすめです!
(編集部 秋重)