~きっかけは一本のむし歯だった。~この物語の主人公の健、京二、カオルたちが少年探偵団を結成した理由のことです。うそから出たまこととはまさにこのことでしょうか。
ある晩、虫歯の痛みに我慢できないカオルに電話で泣きつかれて困った健は、カオルの気を紛らわす為、カオルがミステリー好きなのを利用して、共通の友だちである京二と二人で「少年探偵団をつくったんだよ!」というでまかせを言ってしまいます。ところが思いがけずカオルは、その話を聞いた途端にいきいきとした様子になり、最後は歯がいたかったとは思えないようなはずんだ声で一方的に電話を切ったのです。引っ込みがつかなくなった健が京二に少年探偵団の結成について話に行くと、京二は二つ返事で賛成したばかりか、その場にいた大学生の長谷さんまでもが面白がって協力してくれることになりました。そんなきっかけで誕生した少年探偵団が、身近で起こるちょっと不思議なことから、警察沙汰の大事件までもを次々に解決していく物語です。
著者の砂田弘さん自身も小学生のころともだちと少年探偵団を作っていたのだそうです。
砂田さんの作られた探偵団は活躍の場が得られないまま解散してしまったそうですが、砂田さんが『怪盗ルパン』や『シャーロック=ホームズの冒険』といった探偵小説に影響されたことから探偵団をつくったというところは、健やカオルのミステリー好きという設定に反映されています。
また、単なる小学生三人(のちに“学者”とあだ名されている阿部くんが加入し四人になります)の探偵ゴッコの話ではなく、長谷さんという大学生がいることで推理をする時に知恵を貸す役目だけでなく、車を出したり旅行先の宿を手配したりと彼らの行動範囲を広げる役割を担っているので、小学生だけでは出くわさないような事件に出くわすことも。全部で12の話が収録されていますが、「被害者が犯人だったという話」や「わかっている犯人を追いつめる話」などは、かなり本格的な探偵小説になっています。
これを読んで推理小説って面白いと思った方は著者の砂田さんも影響を受けた、『シャーロックホームズ』や『怪盗紳士ルパン』を読んでみてください!
(総務部 今村)