ミステリーの女王とも呼ばれる、アガサ・クリスティの代表作のひとつ『オリエント急行殺人事件』。
昨年、三谷幸喜監督によってドラマ化されたことも、記憶に新しいですね。(ドラマ版は昭和初期の日本に舞台を変えたものでした。)私立探偵エルキュール・ポワロの登場するシリーズはクリスティ作品の中でも有名ですが、本作もポワロの名推理が光る一冊となっています。
舞台は、厳冬のヨーロッパを横断する、国際寝台列車オリエント急行の列車内。中東での仕事を終えたところ、急な呼び出しでイギリスへ向かうことになったポワロは、イスタンブールからフランスのカレーへ向かうオリエント急行に乗ることにします。ところが、この時期、がらがらに空いているはずのオリエント急行は、この日に限って、予約でいっぱいの満席状態……。どうにか乗り込むことができたポワロでしたが、夜のうちに今度は大雪で列車が立ち往生してしまいます。そんな中、列車内で一人の老富豪ラチェットが殺害される事件が起こるのです。立ち往生したオリエント急行は、おのずとして密室のはず。しかし乗客たち全員にアリバイが。殺人事件の犯人は列車内にいるのか……?
事件発覚後、乗客たち一人ひとりの証言とともにお話は展開していきます。登場人物たちの様子・人物像が見事に描かれているところが、このお話のとても面白いところです。さまざまな国からやってきた、さまざまな階層の乗客たちは、皆個性豊かで、読み進めていくうちに、自分の身近な知り合いのように思い浮かべられてしまいます。それぞれの登場人物をこれだけはっきりと想像できるのは、彼らの証言や行動をじっくりと読むことができる、本ならではの面白さだな~、と思います。そして彼らの性格やら立場やらを考えれば考えるほど、ますます犯人がどこにいるのか、誰なのかが分からなくなってしまうのです……! 私は推理がちっとも当たらないタイプですが、鋭い人ならば途中でトリックに気づくかも……? ぜひ考えながら読み進めてみてください。
明かされる犯人にも、物語の結末にも、驚かされること間違いなし!
奇抜なトリックにだまされる楽しみをこれから味わえる方がうらやましいです。
(販売部 岩澤)