「名探偵」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは誰ですか?
エルキュール・ポアロ、明智小五郎、ピーター・ウィムジィ卿…古今東西の小説には様々な名探偵が登場しますが、やはり、一番有名なのは、シャーロック・ホームズではないでしょうか。ホームズの作者であるコナン・ドイルの名前の主人公が活躍するマンガが人気だったり、もしホームズが現代に生きていたら、というドラマも話題になったり、と、ホームズというのは伝説的な探偵と言えると思います。
そんな人気のホームズですから、さぞかし優等生的で爽やかで完璧人間なのだと思う方もいると思うのですが、決してそんなことはありません。
オンオフが激しくて、オフのときはソファに寝転がって身動き一つしないという日が続くときもありますし、タバコ大好き(煙草の灰について論文を書くぐらい)だし、たまには薬物も吸うしイライラすると部屋の中でも拳銃を打ちまくるし、知識も非常に偏っていて、ズボンのすそについた泥を見ただけでロンドンのどこの地域のものか分かるほど地質学に詳しいのに、天文学に関しては地球が太陽のまわりを公転していることすら知らないというレベルです。
こうして書いていても、だいぶ危ない人だなと思うのですが、それでもホームズには時代や国を越えて人を惹きつける魅力があります。ただ推理ができるとか事件が面白いとかいうだけでなく、シャーロック・ホームズという人を助手であり友人であるワトソンの目から語った事件記録は、一度読み始めたらその続きの事件をどんどん知りたくなるのです。短編も長編も別の魅力がありますが、長編なら『緋色の研究』、短編集なら『シャーロック・ホームズの冒険(上)』から読むのがおすすめです。ドイルがホームズを連載中に使われていたシドニー・パジェットらの挿絵で、当時のイギリスの雰囲気をお楽しみください。
あと余談にはなりますが、「ホームズ」とタイトルに入っていて、シリーズの一つだと誤解されそうなものに『ルパン対ホームズ』という作品があるのですが、これはドイルの書いたものではなく、モーリス・ルブランが自身の生み出したキャラクター、アルセーヌ・ルパン(こちらも有名な怪盗紳士ですね)を、伝説的な探偵であるホームズのパロディキャラクターと対決させたくて書いたものなので、公式なシャーロック・ホームズ作品ではありません(そもそも原書でのキャラクターの名前は「ホームズ」ですらないです)。お読みになるときにはご注意ください。
(販売部 高橋)