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偕成社文庫100本ノック

第14回(プレイバック中!)

テラビシアにかける橋

2018.01.16

『テラビシアにかける橋』キャサリン・パターソン 作/岡本浜江 訳

 わたしたちは普段、予定をたてて暮らしています。「来週の土曜日に会いましょう」こんな風に。でも予定をたてられないこともあります。地震や火事などの災害、事故や体調不良、そして死ぬことです。死んでしまうと「じゃあ次の機会に」ということもできなくなります。その前に最後に会ったのが最後になってしまいます。「最後だってわかっていたら」これは大体の人が味わったことのある、また味わうであろう気持ちだと思います。

『テラビシアにかける橋』の主人公の少年ジェシーは五年生でその気持ちと出会います。学校にあまり仲良い友達はいないけれども走るのは学年で一番になるぐらい速くて絵を描くのが好きな彼がある日、隣の家に引っ越してきた同い年のレスリーに出合います。彼女は親の都合で都会から引っ越してきて一風変わっていて学校ではいじめられますが、走るのはジェシーより速く、分かり合えるところが多くて2人は親友になります。2人は秘密基地を作って「テラビシア」という国だということにし、そこの王と女王として毎日遊びます。ジェシーにとって姉たちより、妹たちより気があって話もできて、正に親友となったレスリー。ところがあるとき、ジェシーが出かけている間にレスリーは一人でテラビシアに行き、事故で死んでしまうのです。

 このショッキングな出来事は、でも、この小説を泣かせるものにするために書かれたのではなくて、作者のキャサリン・パターソンさんの息子の親友の女の子が実際に、雷にうたれて亡くなったという事実を基にしています。この話は彼女のためにも書かれています。そしてわたしがこの話を忘れられないのは、その出来事の後のジェシーの気持ちと周りの人の態度があまりに生々しくて現実感があって、一度読んだらしばらく読み返せなかったからです。ただ純粋に亡くなった人のことを思って悲しいと感じ続けるのは本当はとても難しくて、日々の生活の中で突然の事実に向き合えなかったり余計なことを考えて自分をかわいそうに思ってしまったり、そういった心の動きが描かれている本に大人にならないうちに出合えたのはその後の人生のために良かったと思うのです。そして大人になってから読んでも遅くないので、この本がたくさんの人にとって突然の別れに向き合う助けになってくれればいいなと願います。

 パターソンさんはこのテラビシアにかける橋』『海は知っていた』で2度のニューベリー賞、『ガラスの家族』で全米図書賞を受賞。また、作家としての全業績に対し、国際アンデルセン賞、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を授与されています。さらに今年にはローラ・インガルス・ワイルダー賞の受賞者にも選ばれています。わたしの一番好きな作品は『かぼちゃ畑の女王さま』です。こちらは文庫ではありませんが…。心から本を読みたいな、と思われたときに、パターソンさんの本を是非お手にとってみてください。

(販売部 高橋)

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