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作家が語る「わたしの新刊」

全文が「回文」でできた絵本!『よるよ』コジヤジコさんインタビュー

『よるよ』(中山信一 絵)は、Twitter(@cozyar_kaibun)などで日々自作の回文を発表している回文家、コジヤジコさんが手がけた、全文が回文でできた絵本。回文は言葉遊びの一種で、前から読んでも後ろから読んでも同じ意味になる文章のことです。回文からひろがるふしぎな夜のできごとを、何層にも重なり合うクレヨンが、色鮮やかに描きだします。

今回の新刊では、回文をどのように絵本の形にしていったのでしょうか。

『よるよ』はもともと、ぼくがツイッターにあげていた作品が原作になっています。コロナ禍でよく家の周りを散歩していて、夜の町の写真を撮ったりしながら「夜」をテーマにした回文絵本を作りたいと思い、作りはじめたのです。ですので、その当時はファンタジーでありつつも、日常感のある背景のなかで展開する物語でした。

※コジヤジコさんがツイッターにあげていた作品

いよいよこれを本当に出版できる絵本にしようとなったところで、『よるよ』はイラストレーターの中山信一さんの手に委ねられたのですが……、中山さんは物語の解釈をダイナミックに変えてきたのです。日常は冒険に変わり、どうぶつたちは虹の世界へ飛び立つことになりました。戻ってきたイラストを見て、わお! さいこー! と思いました。

そこから中山さんと偕成社の編集さん、そしてぼくの新たなやりとりがはじまりました。だったらここは新しい回文が必要なんじゃないか、ここは絵だけでいいかもしれない、思い切って擬音も回文にしてみては? そんなこんなで絵本『よるよ』は生まれたのです。

あらためて、これも回文の可能性だなぁと思います。文章としてはちょっと舌足らずでへんてこだから、読む人はいくらでも想像を広げられる。だからどこへでも羽ばたいていけるんです。ぼくと中山さんの想像力が混じり合って『よるよ』の世界はぐんぐん広がっていきました。

回文を作るようになったきっかけを教えてください。

むかしから、ちょっと変わったものが好きでした。子どものころって、そのときどきで変なものが流行ったりしますよね。ちょっとしたなぞなぞだったり、くだらない言葉遊びだったり、手品だったり、手遊びだったり。そういうのが好きでした。勉強したことはあまり覚えていませんが、くだらないことならかなり憶えています(笑)

大人になって、言葉で表現することに興味を持ちました。コピーライターに憧れて、養成講座にしばらく通っていたこともあります。そんなぼくの好みが交わる交差点みたいなところで回文に出会ったのでした。2010年ごろだったかと思います。インターネットでいくつかの回文に出会って、これはなんだかおもしろそうだぞと思い、作りはじめたのです。

回文の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

回文は、表現方法のひとつとしてとてもおもしろく魅力的だと思います。

小説、詩、エッセイ、短歌、俳句などそれぞれに、その表現方法だからこそ生まれるきらめきや豊かさ、魅力があると思いますが、回文にもそれがあります。五七五の十七音という制約が俳句の豊かで広がりのある表現を生むように、反対から読んでも同じ意味にならねばならないという回文の制約が、ふしぎな魅力を持つ表現につながっていると感じるのです。

なにせ半分は偶然でできているようなものです。ある言葉をひっくり返すと、思わぬ言葉につながることなんてしょっちゅうです。自分のあたまの中でいくら考えても辿り着かないようなふしぎな世界へ、回文はときどき連れて行ってくれるのです。言うなれば回文は「自立型詩的跳躍装置」。だから、やめられません。

回文はどうやって思いつくのですか?

自然に思いつくこともたまにあるのですが、まあたいていは作ろうと思って作るって感じです。まずは気になる言葉をひっくり返してみるところからはじめます。

たとえば、絵本『よるよ』と同じく、「夜」という単語で回文を作ってみます。
まず、「よる」をひっくり返すと「るよ」になります。
つぎにそのふたつをくっつけます。

「よる るよ」

これだけで意味が通じる回文ができることもありますが、今回はそうはなりませんでした。今度は、ふたつの言葉の間に一文字を入れて、何かしら文章にならないかトライしていきます。ためしに、あいうえおから順に入れてみましょう。

「よる あ るよ」(夜有るよ)
「よる い るよ」(夜居るよ)
「よる う るよ」(夜売るよ)
「よる え るよ」(夜得るよ)
「よる お るよ」(夜折るよ)

おお、どれも意味の通じる文章になりました。ひっくり返して、くっつけて、真ん中に一文字入れる。これで回文が出来るのです。回文の作り方はこれだけではありませんし、もっと長くしたい場合は、ここからまた工夫を加えていきます。

そのように考えるのですね。回文づくりは誰でもはじめられますか?

それはもう、どんな人でも。これは回文の良いところだなと感じているのですが、「発表のハードルが低い」んです。

たとえば「詩を作って発表してみましょう」と言われたとします。自由に考えて、恥ずかしがらずに、あなたらしくと。いや、そう言われてもやっぱり恥ずかしいんですよね。でも回文なら、言葉をひっくり返したら偶然できてしまった、というある種の「言い訳」ができます。なので、発表することになんの恥ずかしさもありません。

表現のなかに「私の思い」が希薄であることは、詩の価値としては低いのかもしれません。でもだからこそ、何か表現をしたい、でも一歩目が踏み出せない。そんな人にとって、回文はあんがい良いのではないかと、まじめに思っています。回文作りは、ほんとうに誰でもはじめられるんです。

今までに作った中で、お気に入りの回文を教えてください。

とくに気に入っている回文をいくつか紹介します。

・巣でも苦しい、恋知るクモです。(すでもくるしいこいしるくもです)
・さかな来て住む、すてきな傘。(さかなきてすむすてきなかさ)
・だろ? 命の色だ。(だろいのちのいろだ)
・ボロくないって、つい泣くロボ。(ぼろくないつてついなくろぼ)
・道行くゾウと盗賊一味。(みちいくぞうととうぞくいちみ)
・門にゴリラ好き、ずらり五人も。(もんにごりらずきずらりごにんも)

最後に、これは作った中でもほんと奇跡のような回文で、ツイッターで発表したところバズりました(笑)

読者にメッセージをお願いします!

すごくおもしろくていい絵本ができたと思っています。まずは絵をじっくりと味わいながら、回文であることも気にせず、声に出して、言葉のリズムや間をたのしんでください。3匹の動物といっしょにふしぎな冒険に旅立ってください。お子さんに、実はこれ、回文でできているんだよって後から種明かしをしてあげたら、さらに興味を持ってくれるかもしれません。

子どもも大人も、絵本『よるよ』をたのしんでいただけるよう心より願っています。

ありがとうございました!


コジヤジコ
1977年生まれ。回文家。会社員をするかたわら、回文づくりをライフワークとして、ZINEなどを制作。作を担当した絵本に『まくらからくま』がある。

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小学校6年生のときに、「十一月の扉」を読んで以来、高楼さんの本が大好きです。「街角には物語が…」も、読んでいてとても心があたたかくなりました。高楼さんの物語の世界は、小さい頃から私の憧れている世界そのもので、本当に大好きです!!(17歳)

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