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作家が語る「わたしの新刊」

白亜紀に生きた、空を飛ぶ翼竜を描いた『プテラノドンのそらとぶいちにち』インタビュー

白亜紀に生きた、空を飛ぶ翼竜、プテラノドンの1日を描いた『プテラノドンのそらとぶいちにち』。『ピン・ポン・バス』のコンビで知られる竹下文子さんと鈴木まもるさんの、恐竜たちの絵本シリーズの第3弾です。実生活ではご夫婦でいらっしゃるおふたりに、本作の制作過程についてお話を伺いました。

恐竜シリーズ3冊目になります。おふたりは、もともと恐竜がお好きなお子さんでしたか?

竹下:私は、恐竜も怪獣もまったく興味がなくて、すべて大人になってから、子どもが生まれてからです。絵本や図鑑を息子と一緒に見ながら、これのどこがそんなに面白いんだろうって最初は思ってたんですけど、何十回も読まされたおかげで、こちらもいろいろ詳しくなってしまいました。

鈴木:ぼくは、とても好きでした。子どものころ、「少年タイガー」と「少年ケニヤ」という山川惣治さんの絵物語の本があり、その中で、ティラノサウルスやケラトサウルスなど恐竜の住む世界に迷い込む部分があり、何度読んだかわからないくらい読みました。

ディズニーのアニメ映画「ファンタジア」で、恐竜が出てくる場面も子供心に強く残りました。そのあとも、ネス湖のネッシーとか未確認生物などの情報にワクワクしていました。

今回の主人公をプテラノドンにした経緯、プテラノドンのみどころについても教えてください。

竹下:前の2冊(『トリケラトプスのなんでもないいちにち』『ティラノサイルスのはらぺこないちにち』)は、草食動物と肉食動物の違いを見せたくて、2冊セットで作りました。それが白亜紀の恐竜だったので、次は時代をさかのぼってジュラ紀で2冊かな……と考えたんですけど、結局ステゴサウルスでもトリケラトプスでも、地面の上を歩いて食べてという生活は同じ、背景も似たような感じになってしまう。がらっと変えようということで、3冊目は翼竜になりました。

なんといっても空を飛べるというのが最大の魅力ですから、地上の恐竜とは違ったスピ-ド感と自由さが伝わるといいなと思います。

鈴木:最初、頭の中に「プテラノドンの とんでる いちにち」というタイトルが出てきて、「プテラはどうでしょう?」と文子さんに言いました。空を「飛んでる」と心が弾む、「とんでる」でかわいいなあと思ったのでしょう。

空を飛ぶには相当な軽量化が必要だと思います。絶対コモドオオトカゲみたいなのでは空を飛べません。大海原を飛翔する水鳥のイメージで描いたので、そんなビュンビュン感を感じてもらえると嬉しいです。

あとは全2作同様、同じ地球の上に住む生物としての自然な感じです。いつも海外の秘境やジャングル、家の周りの山の中で、ここに恐竜がいたらどう見えるかなと思った気持ちを描くようにしています。

途中で海から出てくる、巨大なモササウルス(同じ時代の海生爬虫類の一種)のシーンは大迫力でした。

竹下:映画「ジュラシック・ワールド」の終盤で、突然ざばーっ! と出てくるシーンがあるでしょう。ああいうのやりたいなと思っていて、モササウルスを主役にする案も出たくらいです。でもモササウルスは分類上「恐竜」ではないし、舞台が完全に海の中になってしまうと、陸上の他の恐竜を登場させるのが難しいので、こういう形でのゲスト出演になりました。

鈴木:ページをめくると……ドーンというのは、描いていても楽しいです。

プテラノドンは本当にいたんだな、と思わせる、親近感のわくストーリーでした。物語は、プテラノドンの生態についても調べられながら組み立てていったのですか。

竹下:生態といっても、化石ですからね。生きて動いている姿は誰も見てないわけですから。

プテラノドンという名前は、ギリシャ語で「翼があって歯がないもの」という意味だそうで、骨格から見てこれだけ大きな翼があれば飛ぶだろうし、歯がなければ餌は丸呑みだろうし、足が小さいから歩くのは苦手だろうと。でも、何を食べたかというような、化石に残っていないことは、はっきりはわかっていないようです。

私が想像したのは、大型の海鳥、それに折り畳み傘と凧とグライダーを合わせたようなもの……(笑)。海鳥の中には、離着陸が下手なのがいて、オオミズナギドリなんか、繁殖のために島に降りるときは、木にぶつかったりひっかかったりしながらドタバタ落ちてくるんです。飛び立つときも崖っぷちまで行かないと飛べない。

プテラノドンも、滑空している間はいいけれど、何かのアクシデントで墜落してしまったらどうするんだろう、と疑問が浮かび、そこからストーリーができました。

森の中に落っこちて「まずい、まずい、これはまずい」とつぶやいているプテラ君が、すごくかわいく思えたので、「がんばれ、がんばれー」と言いながらそのあとを書いていきました。どうぞみなさんも一緒に応援してやってください。

鈴木まもるさんは、鳥や鳥の巣についても長年研究されていますが、今回は翼竜が主人公でした。描くに当たってこれまでの経験も生かされたのではないかなと思いますが、いかがでしょうか

鈴木:広い海を生活圏にしている水鳥の多くは白い色が基調です。太陽の光や照り返しの影響でしょう。表面の肌の質感なども、陸上の恐竜とは違うツルツル感にしました。それと、オスの「とさか」はオスとしての目立たせたい部分ということで、絵本の中で、メスとは形と色に差を付けました。

鈴木まもるさんが描いたラフ

お母さんプテラが子供たちに餌を吐き戻してあげている部分は、シジュウカラさんの巣箱の中を見たときのように、子どもプテラがギャーギャー喜んでいる感じを描きました。この辺は、鳥さんたちの巣での行動を参考にしています。幼体は、鳥さん同様目立たない色にしました。

今回も恐竜学者の田中康平さんに形態のことなどアドバイスいただきました。指の手前にある、飛び方を微妙に制御する翼支骨(よくしこつ)は、飛行機のフラップのような役割をしていると思うのですが、良くできているなあと感心しながら描きました。

恐竜はどんな色だったかわからないから、過去に恐竜の絵本の依頼があっても、なかなか快諾できなかったそうですね。今回のプテラノドンは青い海に映える、うつくしい色づかいで魅力的でした。どんなふうに色を選んでいきましたか。

鈴木:鳥の巣を調べる中で、過去の恐竜時代にさかのぼり、鳥ではないけれど空を飛べるというところで、描きたい気持ちはありました。

世界中の多くの鳥の絵を描いていて、色や形には、ちゃんと理由があることが、なんとなく感じられるので、今いる鳥さんを参考に色や形の細かい部分や動きを決めました。

鈴木まもるさんが描いたラフ

鳥の色や形にもそれぞれに理由があるのですね。おふたりの息の合った本づくりの過程、おもしろく伺いました。ありがとうございました!


竹下文子 
1957年、福岡県に生まれる。東京学芸大学在学中に童話集『星とトランペット』でデビュー。「黒ねこサンゴロウ」シリーズで路傍の石幼少年文学賞を、『ひらけ! なんきんまめ』で産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。『なまえのないねこ』で講談社絵本賞など6つの賞を受賞。主な作品に「のりもの絵本」シリーズ、『まじょのむすめワンナ・ビー』、『げんきになったよ こりすのリッキ』、『しゃっくりくーちゃん』、『ねえだっこして』、『ポテトむらのコロッケまつり』、『にげろ! どろねこちゃん』、『なんでもモッテルさん』、『つきのこうえん』などがある。静岡県在住。

鈴木まもる
1952 年、東京都に生まれる。東京芸術大学中退。「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さし絵賞を、『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞を、『ニワシドリのひみつ』で産経児童出版文化賞JR賞を、『あるヘラジカの物語』で親子で読んでほしい絵本大賞を受賞。主な作品に「のりもの絵本」シリーズ、『せんろはつづく』、『みずとは なんじゃ?』、『としょかんのきょうりゅう』、『戦争をやめた人たち』、『どこでもタクシー』が、鳥の巣研究家として『鳥の巣いろいろ』、『ツバメのたび』、『鳥は恐竜だった』、『身近な鳥のすごい巣』などの著書がある。静岡県在住。

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