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作家が語る「わたしの新刊」

その子らしさをうけとめる物語『まじょのむすめ ワンナ・ビー』著者インタビュー

両親に「大きくなったら、きっとすごいまじょになるわよ」と期待されて育った、魔女の女の子ワンナ・ビー。けれども、まじょの学校へ入学してみると、実はまほうの勉強がとっても苦手だということがわかって……。

魔女と聞くだけであこがれるけれど、だれにだっていろんな得意不得意、ありますよね。その子まるごとを認めてくれる、竹下文子さんのあたたかな物語に、種村有希子さんが愛らしい絵をつけた幼年童話について、おふたりにお話を伺いました。


––––ワンナ・ビーをみまもるあたたかな視点が読者の心をまあるくする童話でした。どんな思いでこの童話が生まれたのでしょうか?

もともとは「魔法」をテーマにしたアンソロジーのために書いた短編でした。原稿依頼をいただいたのが東日本大震災のすぐあとで、震災の3か月後くらいに書いたんです。

うちは地震の被害はなかったんですけど、停電で真っ暗なときに、まるい形のランプを両手で持ってうろうろしていて、ふと「あ、わたし、光の玉持ってるみたい」って思ったことを、そのまま書きました。

心細い気持ちでいるみんなに「だいじょうぶだよ」って、言ってあげたかった。自分も、誰かにそう言ってもらいたかった。その部分がまずあって、そこに向かって書いていきました。

アンソロジーは中学年向きだったので、ワンナ・ビーも10歳くらいに見えるんですが、どこかほんのちょっと、しっくりしないところがあって、5年以上ずーっと気になっていて……。低学年向きに文体を変えて、全体を書き直してみたら、やっと納得のいく作品になりました。

––––ワンナ・ビーが「あまり気にしない」という性格の持ち主であるところもこの物語の良さですね。お父さんとお母さんの子どもを肯定してくれる雰囲気も、とても安心感がありました。それぞれのキャラクターを考えるときに意識したことがありますか。

主人公は、自分に似てないことのほうが多いです。わたし自身がいろいろ気にして疲れやすいタイプなので、ぜんぜん気にしないでいられたら、すごく楽なんじゃないかなって。

とにかく自分で「ああ、いいな」「かわいいな」「素敵だな」「かっこいいな」って思えるように書く。子どもたちはそういうモデルを見て育っていくわけですから。とくに低年齢向きのお話を書くときは、それが基本だと思っています。

––––竹下さんはどのようなお子さんでしたか?

本さえあれば幸せという子でした。読む本がなくなると、母の料理の本とか洋裁の本とか、広告のちらしでもジャムのラベルでも何でも読んでました(笑)。とにかく活字に対する興味がものすごく強かったみたいです。「本ばっかり読んでないで、お外で遊んできなさい」って追い出されても、すぐ帰ってきちゃって。

だから読み書きは得意だったんですけど、それ以外はいろいろ問題ありで……コミニュケーション能力低いし、算数も苦手。いまでもそうです。ぜんぜん変わってないです。

––––いま、まほうを使えるとしたら、どんなまほうを使いたいですか?

うーん、ほうきにお掃除をしてもらうとか?(笑)ここぞという大事なときに使うために封印しておいて、結局使わないまま一生が終わってしまいそうな気がします。

––––種村さんの絵がそえられた感想はいかがですか?

最初に、種村さんがワンナ・ビーのラフスケッチを描いてくださったとき、もうそれがめちゃめちゃ可愛くて。一目で「この子だ!」って思いました。

種村さん「原型は、ちょっと髪が長くてお姉さんぽいです。描いててどんどんワンナ・ビーをわかっていったかんじも、あらためて楽しかったなあと思いました。」

好きな場面は、ワンナ・ビーが眠っている間に、お父さんとお母さんが話し合っているところです。お父さんがお母さんの手をとって、「だいじょうぶだよ」って励ましているところ。このふたり、ほんとにラブラブで、素敵なんですよ。

子どものことを考えるには、まず両親がお互いに信頼し合っていることが大事なんだなって……それは原稿にはひとことも書いてないことなんですけど、絵の中から浮かび上がってきた重要なテーマのひとつです。

幼年童話というより、ページ数が多めの絵本に近い形にしてもらったので、オールカラーで描いていただけたのもうれしかったです。学校の制服や、お母さんの魔女スタイルも、黒にちょっとピンクがあしらってあったり、とってもおしゃれできれいなんですよ。そんなところもぜひ見ていただけたらと思います。

––––種村さんにもお話しを伺います。はじめてこの童話を読んで、いかがでしたか?

ワンナ・ビーの原稿をはじめて読んだとき、電車の中だったのに、思わずぽろっと泣いてしまったんです。これは、こどものときの私のお話だって、するっとワンナ・ビーに重なりました。とくに「ワンナ・ビーは、できなくてもあまり気にしていませんでした」というところ。私もそういう子だったので、まるごと肯定してもらった気がして、とてもあたたかい安心感がありました。それが絵でも伝わるようにと思って描きました。

––––特に印象にのこっているシーンはありますか?

むずしかったところは、光の玉が浮いていて風景が透けて見えるシーンです。

最初は光の玉を浮かべている手があったのですが、竹下さんのご指示でこの構図に。全体の中で、ひとつだけやや抽象的に見える構図だったので、うまくはまるかなと挑戦的なきもちで描いたのです。でも結果、ワンナ・ビーのうれしさや希望を感じるきもちが、すーっと伝わる絵になったと思います。どうやったら効果的に伝わる場面になるかということをすごく学ばせてもらったシーンです。

この本を、たくさんの子どもたちに読んでいただけたらと思います。おふたりとも、ありがとうございました!


竹下文子(たけした ふみこ)
1957年、福岡県生まれ。東京学芸大学で幼児教育を学び、在学中に童話集『星とトランペット』(講談社)でデビュー。1995年に「黒ねこサンゴロウ」シリーズで、路傍の石幼少年文学賞を受賞。主な作品に『ちいさなおはなしやさんのおはなし』(小峰書店)、『スプーン王子のぼうけん』(すずき出版)、『ピン・ポン・バス』(偕成社)など多数。翻訳に『どうやって作るの? パンから電気まで』(偕成社)など。静岡県在住。

種村有希子(たねむら ゆきこ)
1983年、北海道釧路市生まれ。多摩美術大学絵画学科卒業。2012年、第34回講談社絵本新人賞を受賞。受賞作である『きいのいえで』(講談社)で、絵本作家としてデビューする。主な作品に『キノキノとポキのふしぎなみ』(双子の姉、種村安希子との共作。講談社)、『あのこのたからもの』(ブロンズ新社)、『きょう、おともだちができたの』(得田之久 作/童心社)など。東京都在住。

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